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"悪人正機"、シフ、"ハンマークラヴィーア"

2013.07.07 - ベートーヴェン

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吉本隆明(聞き手:糸井重里)の「悪人正機」を読む。

これはおそらく若者向けに書いたであろう、人生の指南書。それぞれのテーマに則り、吉本が自由に語る。その内容は奔放であり、論理的ではなく、感覚的で、だからひとつの言葉に突き刺さることがある。

これは「理想の上司ってなんだ」の章。
「僕が会社勤めやなんかで体得したことでは、会社において、上司のことより重要なのは建物なんだってことです。明るくって、気持ちのいい建物が、少し歩けばコーヒーを飲めるとか盛り場に出られるような場所にあるっていう・・・・そっちのほうが重要なんだってことなんです。僕は、そういう会社だったら、勤めがうまく続くと思いますね」

至言である。
もうひとついうならば、家から近いこと、これに尽きるだろう。












アンドラーシュ・シフのピアノでベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」ソナタを聴く。

シフのベートーヴェンは大好物。90年代に東京で彼の「ハンマークラヴィーア」を聴いて以来。だからこのCDには期待しないわけにはいかなかった。

冒頭の難しいところ、彼はなんなく弾きこなす。当然といえば当然だが、ほんの少しのタメを利かせているあたりが凄い。全力ではなく、八分くらいの力で弾いているようだ。パワーに余裕がある。
音はツルツルといぶし銀のように光っていて美しい。ハンドルで言う遊びがあるので、ことさら美しく聴こえる。
件の3楽章においては、テンポを微妙に変化させている。コーナーを丁寧につくピッチャーのよう。右手の高音があたかも心の叫びのようで悲痛。ただ、音そのものは明るい色調なので暗すぎない。
終楽章はぐいぐいと進む。ここでもトルクは高い。動きにじゅうぶんな余裕がある。細部の味付けもちょうどいい。

あまりにも軽々と弾いているようなので、趣きが足りないと感じる向きもあるかもしれない。それにしてもこれだけ完成度の高い「ハンマークラヴィーア」はそうそうあるものではない。

カップリングの27,28番も格別。



2006年5月21日、チューリヒ・トーンハレでのライヴ録音。












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