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ワイセンベルクとジュリーニのブラームス「ピアノ協奏曲第1番」

2008.12.27 - ブラームス

brahms

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 ワイセンベルク(Pf) ジュリーニ指揮ロンドン交響楽団


O・ヘンリー作品集(芹澤恵訳)を読む。
この作家を読むのは、中学のとき以来。新潮文庫から3冊出ていて、片っ端から手をつけていたものだ。
それから二十数年、光文社の新訳で読んでみる。やはり面白い。翻訳者の芹澤恵は、先日に読んだ『フロスト』シリーズも担当している。こうした本を訳しているということは、犯罪チックなスラングに強いヒトなのだろう。
本編を読み返してみると、懐かしい話もあれば忘れ去っていた話もある。
『赤い族長の身代金』、そうそう、こんな話だった。最後まで読んでようやく思い出した。オチが最高。ドリフの先駆けのようなギャグ。
オチがいいといえば『甦った改心』もいい。人情ものの刑事ドラマは、これをヒントにしているものが多いに違いない。
恋愛ものも気が効いている。恋の機転が裏目に出た『サボテン』、心配りが余計なお世話だった『ミス・マーサのパン』、よく知られた話だけど改めて読んだら涙が出てきた『賢者の贈り物』。
この年末にピッタリなのは『警官と賛美歌』。皮肉のスパイスがピリリと効いて、ユーモアたっぷり。この話の冒頭に、フロスト警部との接点を発見。「冬将軍」はジャック・フロストの意味とのこと。これは翻訳者の遊びだろうか!
どれも、とびきりの短編。冷える夜更けに、ポカポカした寝床でひもとくのは、ジンセイでも最高の贅沢のひとつだろう。


ワイセンベルクとジュリーニのブラームス。これも久しぶりに聴く。
冒頭から、ジュリーニがエンジン全開だ。地の底から湧き上がるようなティンパニ、ゴリゴリ軋む低弦のうなり。血管が切れるのじゃないかと心配になるくらい、テンションが高い。オケの演奏がじゅうぶんに気合いのはいったものだから、もうこれだけで満腹感がある。
おもむろにピアノが入ってきたときは、これがコンチェルトだということを忘れていたくらいである。
そんな、忘れられていたワイセンベルクのピアノも、持ち味を出している。
このピアニスト独特の、輝かしい高音を駆使した華のある音響世界が繰り広げられる。テクニシャンの誉れ高いワイセンベルクだから、技巧にまったく危なげはない。高音に焦点を絞った弾きかたなので、全体に腰は高いものの、明るくてきらびやかなことこの上ない。こういうブラームスもありだろう。
ここぞという場面で聞えるジュリーニの唸り声が一興だ。両端楽章のところどころで聞くことができ、それはもう音楽の一部になっているように感じる。グールドやチェリビダッケよりも頻繁には現れないので、ありがたみがあるというか、より劇的な唸り声であるように感じる。
こんなにいきりたっているジュリーニは珍しいし、この曲の録音史上でも稀有なことなのじゃないだろうか。
惜しむらくは録音。音が割れまくっている。むしろ迫力は増しているのかもしれないが、なんとかならなかったものか。もう少し冴えた音で聴きたいと思う。

1972年11月の録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます

仕事納めは終わられたでしょうか?
私は明日まで仕事があります。

オー・ヘンリー短編集 懐かしいですね
英語はかなり難しかったと思います。
翻訳「フロスト」シリーズと同じ方の翻訳が出ているんですね、知りませんでした。「賢者の贈り物」いつ読んでもいい話ですね〜。

ワイセンベルクは一度だけ、カラヤン指揮ベルリナー・フィルハーモニカーの演奏で、ブラームスの2番のコンチェルトを聴いたことがあります。うる覚えなのですが〜。カラヤンとの演奏では、ピアノがかすんでいる感じでした。

ジュリーニのブラームスは凄いものがありますよね〜。シンフォニーと「ドイツレクイエム」くらいしか聴いたことがないのですが〜。

吉田さんはどんな一年でしたでしょうか?
年越しの行事とかはおありですか?

ミ(`w´彡)
2008.12.28 Sun 06:59 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントありがとうございます。

仕事は30日までです。休みは5日だけ…。
もう正月休みのところが多いようなので、電車がすいていることだけが楽しみです。

ヘンリー短編集、英語も読まれましたか。私はもっぱら翻訳を読みますが、この短編集、どれをとっても面白い話ばかりで飽きません。
すばらしいストーリーテラーです。

カラヤン指揮ベルリナー・フィルハーモニカーとの2番はライヴですか?カラヤンの指揮では、ラフマニノフやベートーヴェンは聴きました。
このジュリーニ盤は、全体に指揮者の色が強い演奏です。
ジュリーニがとても気合を入れていて、なかなか白熱した演奏です。

そうそう、第2弾「フロスト日和」をそそくさと購入しました。楽しみです。
年末年始は、音楽を聴きながらフロストを読んですごしたいですねー。
2008.12.28 10:33

無題 - 木曽のあばら屋

こんにちは。
O・ヘンリー、私もかつて(30年ほど前)新潮文庫の3分冊で楽しみました。
で、光文社古典新訳文庫版も、懐かしくて買いました。
すると、新潮文庫版も読み直したくなって、また買いなおしてしまいました。
今読んでもじつに面白いですね。古びていません。
以前拙HPでも取り上げさせていただきました。
http://www.h2.dion.ne.jp/~kisohiro/henry.html
2008.12.28 Sun 12:29 URL [ Edit ]

Re:木曽のあばら屋さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

光文社のO・ヘンリーは、本屋で見かけたときも、ちょっと欲しいなと思っいつつ買わないでいたのですが、以前に木曽さんの記事を拝見して、やっぱり読もうと思って決断しました(そんな大袈裟な…)。
どれも甲乙つけがたい面白さです。
子供にも薦めました。
新潮文庫の3分冊は、もう家にありませんが、これも読んでみたくなります。
2008.12.28 17:16
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