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フルトヴェングラーのブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」

2008.08.23 - ブラームス


BRA

フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィルのブラームス


司馬遼太郎の「坂の上の雲」を読む。
これは、日露戦争前夜から戦争終結に至るまでの軍人の生き方を描いた長編小説。
秋山好古・真之兄弟を軸に、正岡子規や東郷平八郎、乃木希典や児玉源太郎といった人物が描かれる。
半年もかけて全部読んだ後では懐かしいほど前の出来事になるが、戦争に入る前の秋山真之と実兄の好古、そして正岡子規との交流が非常に印象的。飯代わりに酒をくらっていた豪放磊落な好古。
歌で身を立てるつもりだったが、軍人になりたくてしかたがなかった子規。明治の厳しくも牧歌的な人情が描かれていて味わい深い。
子規が死んだ後は、長い長い戦争シーンが続く。海戦と陸戦が交互に登場するが、ことに二百三高地と奉天における陸戦の痛々しさは読んでいて気分が悪くなるほどだ。何人もの人が死んで死んで死にまくる。
この本では、乃木希典が無能な人物として書かれている。実際にもそうだったのかもしれない。人格的には優れているが、戦術的には凡庸であるため、二百三高地で無策をさらけだし、多数の死者を出したとある。
いたたまれずに出動した児玉は、周囲の反対を押し切って大砲を持ち込み、これが見事に功を奏し、敵を木っ端微塵にし、さらには停泊中の戦艦をも沈める。ここは全編のクライマックスのひとつだが、それまでの犠牲があまりにも多く、重苦しい空気を断ち切ることはできない。
一方で、ロシアの戦艦群がアフリカ大陸を南下するルートで日本に迫る。世界を半周する歴史的大移動。
途中で発狂する兵隊は多数、石炭の供給もままならない。ほうほうのていで対馬海峡にたどりつくも、東郷率いる連合艦隊の巧みな作戦により、全滅する。
後日談は、主役の4人についてのみ、ごく簡単に書かれている。連合艦隊の参謀だった真之は、日本海海戦の快勝を人知を超えた何かが要因であると考え、戦後は軍人を辞めて宗教的思索にふけったという。
この日本の勝利は、当時ロシアにいじめられていたトルコ、ポーランドの圧倒的支持を得て、さらには帝国主義国に抑圧されていた東南アジア諸国からも、敏感ではなかったものの、影響を与えたという。
さらに言えば、ロシア革命を推進した大きな事件であった。
全体を通して、全編中のうしろ三分のニの戦場シーンは重苦しく痛切である。戦争は、たとえ勝ったとしても、人が死にすぎる。
技術的解説とウンチクが多いために、安易に読む進むことは難儀であったが、作者の取材量に圧倒されないではいられない力作であるとしかいいようがない。


ALTISのフルトヴェングラーを聴く。1952年のライヴだ。
オール・ブラームスで、ハイドン変奏曲と二重協奏曲、それに交響曲第1番。すごいプログラムだ。
力うどんとうな重とカツカレーが並んだ食卓のよう。胃もたれしそうなヘビー・メニュー。
この二枚組みCDには、この夜に演奏された演目が全て収録されているが、今日は1曲目の「ハイドン変奏曲」を聴く。
冒頭からゆったりしたテンポがいい。悠揚迫らざる雰囲気に満ちている。なんというか、安心して身をまかせられるテンポなのだ。
進んでゆくごとに音楽はさまざまな変化をみせてくるが、ここぞというときのフォルテッシモの強さは強烈で、まるで親のカタキを討つような気力がみなぎっている。当然ながらモノラルの録音はそれをじゅうぶんに捉えることができていないけれど、音のひずみが迫力に輪をかけている。
全曲を通して目立つのは、スカスカしたフルートの音。この音が常に周囲の楽器よりひとまわりかふたまわり音量が大きい。
この時代のライヴ録音だから、音量の編集ではなくて、実際にこうした音だったのだろう。
不思議な存在感がある。

1952年1月27日、ウイーンでの録音
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Comment

無題 - bitoku

吉田さん、こんばんは。

HMVのリンクを見たら2枚組なのに激安ですね。今が”買い”かも。
良いものを教えて頂きました。

古いCDばかり集めているので新しいのは意外に持っていないのが多いです。(笑)

>力うどんとうな重とカツカレーが並んだ食卓のよう。胃もたれしそうなヘビー・メニュー。

はっはっは。確かに。
こういう事を平気でやってしまうところが実に御大らしい。(笑)

二重協奏曲のCDは持っていないのですが、50年代の御大の演奏は好きなものが多いです。

>安心して身をまかせられるテンポなのだ。

おっしゃる通り良い按配のテンポです。

御大のベートーヴェン、ブラームス、ワーグナーの演奏に慣れてしまうと”こう来なくっちゃ”という感じでツボにハマってしまいます。


2008.08.23 Sat 21:39 URL [ Edit ]

Re:bitokuさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

HMVの池袋店をさまよっていたら、ALTISのシリーズがあって、その中に唯一のフルトヴェングラーがこの2枚組みでした。即買いました。
フルトヴェングラーをあまり多く聴くほうではないのですが、久しぶりに聴いてみますと、やはり独特の味があるし迫力があって引き込まれました。今もじゅうぶん魅力的です。

しかし、このプログラムはすごいです。圧倒的なパワー。
さすが御大ですね。
ブラームスといえば、まだ3番は聴いていないので、DGのベルリンフィル(でしたっけ)盤あたり聴いてみたいものです。
2008.08.24 07:33

無題 - リベラ33

昨日、偶然にも松山市にある坂の上の雲記念館に行って来ました。来年からのNHKドラマの放送に合わせて松山市が力を入れて作った建物は大いに立派なのですが、中味は地元の小学生のスケッチや俳句の展示が半分くらいを占めていて正直あまり面白いものではありませんでした。
2008.08.24 Sun 07:19 [ Edit ]

Re:リベラ33さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

松山に行かれたのですね。そういう記念館があるのですか。それは面白そうです。松山といえば温泉もあるし…。
そうそう、この小説は来年にドラマ化されますね。文庫のオビにも書いてあって、それが読むきっかけのひとつでもありました。まだ先ですが楽しみです。
しかし小説は長いものでした。ダラダラと半年かかってしまいました。
2008.08.24 07:40

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます

司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」読んだことがありません、爆~。日露戦争の勝利(?)がその後の日本に与えた影響を書かれていたと思うのですが、どうだったでしょうか?違うかもしれませんが~。

フルトヴェングラー、これも最近まったく聴かなくなってしまっています。昔は割と聴いていたのですが〜。これは、どうしてなのかな、と思ったりもするのですが~。でも、凄いプログラムですね~。
どうして聴かなくなったのか、と思い返しているのですが、分かりません、爆~

ミ(`w´彡)
2008.08.24 Sun 07:40 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

この戦争に突入するとき、一般市民は盛り上がっていたのに対し、当事者である軍人や政治家は不安で仕方がなかったそうです。帝国主義まっさかりの時代、ロシアが東アジアを侵略せんとしたために、日本はしぶしぶ立ち上がったというのが実情らしいです。このあたりの駆け引きを描いたところが、この小説のひとつのクライマックスでした。

フルトヴェングラー、私もあまり聴かない指揮者です。いまのところ年に1度くらいのペースです。でも、聴いてみると面白いものですね。これで音がもっと良ければなあといつも思いますが…。
もう少し聴いてみたくなりました。
2008.08.24 07:51

無題 - mozart1889

こんばんは。
『坂の上の雲』とくれば当地愛媛県の出番でしょうか(笑)。
正岡子規に秋山兄弟は伊予の有名人、これに夏目漱石(松山中学教師)の『坊っちゃん』が加われば、観光名所の誕生であります。
リベラさんがコメントしていらっしゃるとおり、「坂の上の雲ミュージアム」はまだまだ入れ物だけの状態、中身の充実はこれからでしょう。今日のローカル・ニュースでは、来年から放送予定のNHKドラ、の松山城でのロケが始まったと伝えておりました。

司馬作品、好きです。『龍馬がゆく』は十代で読みました。感動しました。青春の思い出です。
『坂の上の雲』は三十過ぎて読みました。これも良かったです。ただ、十代では『坂の上の雲』の良さは理解できなかったろうなぁと思います。
2008.08.24 Sun 21:15 URL [ Edit ]

Re:mozart1889さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

『坂の上の雲』とくれば愛媛です。
この地は、とくに明治の頃に偉人を多く輩出しておられますね。
この小説、大変長いものでしたが、内容もぎっしりつまっていて読み応えがありました。
中でも、前半の正岡と秋山の邂逅の場面は印象的です。正岡が軍人になりたくてしょうがなかったところ、切ないものがありました。
ドラマの撮影が始まったのですね。じつに楽しみです。

司馬作品を読むのは、十代のころに「国取り物語」を読んで以来でした。「坂の上の雲」はやや大人向きかもしれませんね。
いずれ「龍馬がゆく」にも挑戦したいと思います。
2008.08.27 14:46
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