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アンドリュー・デイヴィス、"エフゲニー・オネーギン"

2017.09.05 - チャイコフスキー

ma




アンドリュー・デイヴィス指揮ロンドン・フィル他の演奏で、チャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」を視聴しました(1994年7月、グラインドボーン・オペラでの収録)。


この作品について吉田秀和はこう言っています。
「彼一流の甘い悲しみをふんだんにもった感傷味のまさった音楽だが、有名な<タチアーナの手紙>のアリア以下、よくかけている」。
上から目線も甚だしいですが、彼なりの賛辞と解釈しましょう。実際、手紙のアリア「私は死んでもいいの」を中心としたタチアナの寝室のシーンは、この作品中最大の聴きどころであって、たっぷりとした叙情が湖のように湛えられています。歌はもちろん、緻密なオーケストレーションも聴きものです。

この演奏では、プロキナがいい歌唱を聴かせてくれます。オーケストラのコクのある響きと相俟って、恋のせつなさを瑞々しく歌いあげています。後半にいくに従って、どんどん綺麗になっていくところも見もの。
41歳で夭折したドラボヴィツのオネーギンは、奥行きのある声で流麗な歌い回しを披露しており、プライドが高くて愚かな男をうまく演じています。彫りの深い風貌もいい。
トンプソンのレンスキーは澄んだ歌声で、上品。決闘申し込みの場面での、激情の爆発においてさえも、品があります。アリア「わが青春の輝ける日々よ」は見事。
オルステンのグレーミン公爵のアリア「恋は年齢を問わぬもの」は風格たっぷり、説得力があります。

デイヴィスは、しっとりとした柔らかなトーンで全体をまとめています。とくに穏やかなシーンが美しい。歌手たちとの息はぴったり合っています。

グラインドボーンは、客席は小ぶりなものの、舞台はじゅうぶんな奥行きがあり、オペラを観るには最適の劇場だと感じました。比較的簡素な装置を使った演出は、音楽を最大限に生かせるものであると思料。



タティアナ:エレーナ・プロキナ
エフゲニー・オネーギン:ヴォイテク・ドラボヴィツ
レンスキー:マーティン・トンプソン
オリガ:ルイーズ・ウィンター
ラーリナ夫人:イヴォンヌ・ミントン
グレーミン公爵:フロデ・オルステン
フィリピエヴナ:リュドミラ・フィラトワ
合唱:グラインドボーン・コーラス
指揮:アンドルー・デイヴィス
演出:グレアム・ヴィック









ma
 
パースのビッグムーン。












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