忍者ブログ

"もたない男"、ネトピル、"わが祖国"

2015.07.25 - スメタナ

ma
 


中崎タツヤの「もたない男」を読む。

著者は漫画「じみへん」の作者。
週刊漫画は、社会人になってからもしばらく読み続けていたが、いつのころからかやめた。少年マガジンとビッグコミック・スピリッツを愛読していた。「じみへん」は当時から連載しており、いままだ続いているらしい。
「じみへん」は、いかにも私小説風な漫画であり、作者は一風変わった人なのだろうとつらつら思っていたが、この本を読んで確信した。

新しいものを買うことは好きだけれど、捨てるのはもっと好き。これは、なんともラディカルな断捨離。

冒頭に著者の仕事部屋の写真が掲載されている。机以外は、なにもない。押入れのなかにはガスレンジのみ。これはもともとあったもので、自分のものではないから捨てられないだけ。けれども隙があれば捨てようと目論む。
キッチンには当然なにも置いていない。仕事用の椅子には背もたれがない。無駄だから。時計もない。エアコンのリモコンで時間がわかるからだ。
本を買うときは、紙袋やブックカバーをもらわない。これはわかる。さらに彼は、カバーと帯もいらないと思っている。だが、店の人にはなかなか言い出せない。本屋さんは、きっとカバーと帯も含めて本を愛しているからだと想像するから。そのへんは優しい。

髪型についても、ウェーブやパーマがかかっている人をみると、イライラしてまっすぐになおしたくなる。
最後に、彼の名言を。

「キャバクラのおねえさんの盛り髪は本当に無駄です」。







ネトピル指揮プラハ交響楽団の演奏で、スメタナの「わが祖国」を聴く。

これは元気な演奏だ。精緻さよりも勢い重視。近頃は録り直しOKの名ばかりライヴ録音が多くまかり通っているが、このディスクは臨場感たっぷりで、実際に会場に座っているかのようだ。

トマーシュ・ネトピルという指揮者を初めて聴いた。彼はチェコでヴァイオリンと指揮を学び、2002年のショルティ指揮者コンクールで優勝。その後「プラハの春」音楽祭で指揮者デビューを果たした。
2009年からプラハ歌劇場の音楽監督に就任しており、チェコの新世代を代表する指揮者のひとりとされている。

編成は、ヴァイオリンの対抗配置。
「高い城」ではキザミが両方から聴こえてくるところあたり効果的であり面白い。右奥のチェロも比較的よく聴こえる。
この配置が最も生きた曲は「ボヘミアの森と草原から」か。ヴァイオリンの旋律が左から右へと流れてくるところなど、とても幽玄であり効果が際立つ。
全曲を通じて、シンバルとトライアングルは妙に生々しい。いかにも加工されていない感じ。

「ターボル」のオーボエ、とても清冽。件のホルンは素朴な音。わずかにヴィブラートをかけているので、ほのかに甘い。そのあとに続く行進曲は高揚感たっぷり。背中が痺れる。会場で聴いたならば、泣くだろう。

この演奏は最初に書いたとおり、荒削りではあるものの、それを補って余りある躍動感とみずみずしい生命力に満ちている。

この曲に関しては、クーベリック(ボストン交響楽団あるいはチェコ・フィル)とスメターチェク/チェコ・フィルのものを最近気に入っているが、ネトピル盤もじゅうぶんに魅力的だ。前者が落ち着いた大人の佇まいを聴かせてくれるのに対し、ネトピルは豊かな感性をおしみなく広げて、祖国への愛を歌い上げる。忘れがたいディスクになりそう。


2008年10月28日、プラハ、スメタナ・ホールでのライヴ録音。




ma
 
休憩。





重版できました。




「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!








PR
   Comment(2)    ▲ENTRY-TOP

Comment

「じみへん」懐かしい! - 木曽のあばら屋

こんにちは。
「じみへん」懐かしい!というかまだ続いているのですか(びっくり)。
連載開始時「スピリッツ」愛読してました。
もう10年くらい読んでない・・・というか漫画雑誌を読まなくなりました。
コミック単行本はいまでも結構買ってるんですが。
2015.07.25 Sat 16:00 URL [ Edit ]

また読みたいです。 - 管理人:芳野達司

木曽のあばら屋さん、こんにちは。
「美味しんぼ」と並んでまだ続いているとのこと。読み始めた頃は「めぞん一刻」がやっていましたから、隔世の感があります。
「伝染るんです」が始まったときは衝撃でした。こんなことしていいのかと。。?
いまは同様の漫画はあるようですね。
2015.07.26 21:49

マタチッチ - neoros2019

先週、ブルックナー愛好会解散後、元会員同志の初会合がもたれ昼から4時間近く鑑賞会らしきものをやりました。
そこで新会長が全曲かけたのがマタチッチ/ウィーン放響の「わが祖国」でした
なにやら会長はこのマタチッチ盤に大変いれこんでおりクーベリックやノイマンその他のものより何十年来ダントツに好んでおられる旨を語っていました
私はこの曲についてはモルダウだけウィスキーをやる時のお伴にと1年前に他のCDと合わせて付け足しで購入した経緯があるので
何か新鮮な思いで聴き入りました

2015.07.26 Sun 17:37 [ Edit ]

評判いいですね。 - 管理人:芳野達司

neoros2019さん、こんばんは。
ブルックナー愛好会、楽しそうですね。朝比奈の評価はどうでしょうか? 私は生で何回か聴いたので思い入れがあるのですが、いまは忘れ去られつつあります。。

「わが祖国」で検索すると、この曲のエキスパートみたいな人が書いているサイトがあって、それを参考にしています。マタチッチはこの曲を何度か録音しているようで、このウイーン放送響のもいいようです。聴いてみたいディスクのひとつです。
「わが祖国」は、それぞれの曲を単発で聴くとまあまあくらいですが、全曲通して聴くとスゴイです。
2015.07.26 21:52
コメントタイトル:
投稿者名:
Mail:
URL:
投稿内容:
Password: ※1
Secret: 管理者にだけ表示を許可する※2
※1 パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。
※2 チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新コメント
カッチェン、フロマン、ブラームス"ピアノ協奏曲2番" from:Yoshimi
-11/16(Thu) -
フルニエ、フィルクスニー、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-03/18(Sat) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-02/20(Mon) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:“スケルツォ倶楽部”発起人
-02/20(Mon) -
古典四重奏団、ベートーヴェン、15,13"大フーガ" from:老究の散策クラシック限定篇
-10/30(Sun) -
最新TB
カテゴリー