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"溺レる"、ヤルヴィ、シューマン"ライン"

2013.09.15 - シューマン


ma

 


川上弘美の「溺レる」他を読む。

これは愛欲を描いた短編集。

「さやさや」は、蝦蛄を食いに行った後に情事をしようと思いながらも行く付く先が見当たらず、女が道端の草むらで小便をする話。まどろっこしさが手に取るようにわかる。
「溺レる」は、アイヨクに溺れた男女が駆け落ちをする話。心中しようとしてもできない無力さが切ない。
「亀が鳴く」は、同棲していた相手に出て行かれた女の回想。彼が置いていった亀がときどききゅっと鳴く。うちのミドリガメは鳴かないけどな。
「可哀相」は、サディストの男から逃れられない女の悲哀を描く。遊園地で焼きそばやビールをすする姿が間抜けだ。
「七面鳥が」。『四十歳にもなった女はめったに美人なんて言われる機会がないんだから、もっときちんと説明してよ』というセリフがいい。さっきテレビで観た若村真由美は美人だったけど。
「百年」は、心中して死んだ女が成仏できずにクヨクヨ回想する話。男は生き残り87歳まで生き延びるが、それを淡々と、でも腑に落ちなさそうに話す佇まいがいい。
「神虫」は、ひとりの女をめぐるふたりの男の馬鹿さ加減を描いた話。変人と思っていた男に三人でやることを咎められて落ち込む馬鹿な女の話でもある。
「無明」は、不実を犯して不死の罰を受けた男女の話。不死なのに、若いカップルではないあたりが面白い。













パーヴォ・ヤルヴィの指揮によるシューマンの交響曲3番「ライン」を聴く。

ノン・ヴィヴラート奏法によるシューマンのシンフォニーをいままで何回か聴いた。あまりいいものはなかったので、今回も期待していなかったが、裏切られた。

この演奏の良いところは随所にあるが、ふたつに絞るとひとつめは1楽章である。
第1ヴァイオリンのキザミがなんといっても素晴らしい。瑞々しくてきっぱりしていて、それでいて優美。空間が青空のように広がっている。音楽が生きている。

ふたつめは終楽章の冒頭。ここで指揮者はレガートを採用している。これは私が知る限り、ジュリーニ以来である。ジュリーニはフィルハーモニア管とロス・フィルとのふたつの録音においていずれもレガートを採用しているが、ことに後者は目覚ましい効果をあげている。
ヤルヴィのこの演奏はそれに負けていない。とても、自然に演奏している。あたかも楽譜にそう書いてあるかのように。驚くくらいに柔らかくて優しいのだった。

宮崎駿ではないが、これを聴いている間、生きることは素晴らしいということを少し実感した。

カップリングの「春」も、とてもいい。



パーヴォ・ヤルヴィ指揮
ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン



2009年12月、ベルリン、フンクハウス・ケーべニックでの録音。













ma
 

ペドロのジャンプ。















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Comment

ジュリーニのライン - アソー

連投お許し下さい。
ジュリーニのライン、第一楽章の出だしから他の盤とは違いますよね。他の盤だと流れるように始まるのが、ジュリーニだとがっちりとした構築物のように堂々と始まるのが大好きです。ジュリーニはマーラーの改訂版を使っていると昔記事で読んだ記憶がありますが、確かに少し違って聴こえます。ジュリーニのは名盤だと思います。
などと言いつつ今iPhoneでアーノンクールのラインを聴きながらこのコメントを入れています。
ヤルヴィは最近評判の良い指揮者ですね。お父上も素敵でしたが…。
2013.09.18 Wed 00:34 [ Edit ]

ジュリーニのラインは刷り込みです。 - 管理人:芳野達司

アソーさん、こんにちは。
連投、大歓迎です。
そう、ジュリーニのラインはマーラーの改訂版ですね。といいつつ、具体的にどこがどう違うのかいまひとつ理解していないのですが。。
演奏そのものが素晴らしい。一楽章の出だしもじつに堂々としています。ジュリーニはフィルハーモニアとの演奏もステキなのですが、やはりロスフィルとのもののほうが完成度は高いと思います。この演奏を聴くと他の演奏がなかなか受け入れにくいのですが、紹介させていただいたパーヴォ・ヤルヴィ盤やハイティンク/コンセルトヘボウがいい演奏だと思います。
アーノンクールはどうですか?まだ聴いたことがありません。
2013.09.18 08:16

追記です。 - アソー

返信ありがとうございます。
アーノンクールのは中編成?のスッキリとした演奏です。響きが整理されており、曲の構造がくっきりと浮かび上がる様な感じです。それでいて終楽章でホルンが強奏されるなど、時々バランスを意図的に崩す所が面白いです。
ジュリーニ、ロスフィル以外だと難しいですね。実直なハイティンクもいいですが、其れならば旧スタイルに徹したチェリビダッケ、シューリヒト、朝比奈隆(ライブで生で聴いたから?)辺りが良いかと思います。それとスタイルは違いますがアーノンクール、軽やかでいいと思いますよ。
2013.09.19 Thu 02:05 [ Edit ]

情報ありがとうございます。 - 管理人:芳野達司

アソーさん、こんにちは。
アーノンクールなるほど、わかるような気がします。透明度が高くて見通しのいい演奏なのでしょうね。そういうのは好みです。響きが混濁するような演奏は、例外はあるにしても、あまり積極的に聴きません。
チェリビダッケですと、4番は聴きましたが3はまだです。4番は彼らしい独特の味があります。ラインもそうなのでしょう。シューリヒトは大昔に聴いたような気がするのですが、定かではありません。朝比奈隆は意外です。彼の演奏はブルックナー以外はあまり聴いていないのです。
メモっておきます。
2013.09.19 14:37
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