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カーゾンのシューベルト「ピアノソナタ第17番」

2006.12.10 - シューベルト
カーゾン

クリフォード・カーゾン/シューベルト「ピアノソナタ第17番ニ長調」

帯に「カーゾンの十八番」とある。シャレのきいた帯である。

大方の人が感じていると思うのだけれど、シューベルトのピアノ・ソナタには長くて退屈なものが少なくない。
こうしてブログを書きながらBGMとして聴くなら長くたっていいじゃないかということもあるが、軽く聞き流すには、やや重いのだ。なんだかとりとめのない憂鬱さと、出口のないような悲しみを感じる。18番とか21番なんて曲は、ちょっと気合を入れないとなかなか聴くことができない。
だからあまり積極的に取り出す類の音楽ではないのだが、なんだかとても気になる存在なのである。

この17番は、村上春樹の音楽エッセイ「意味がなければスイングはない」で取り上げられている。
それを読んで気になって、このカーゾン盤を聴いてみたわけ。
村上はこの中で、「いったいフランツ・シューベルトはどのような目的を胸に秘めて、かなり長大な、ものによってはいくぶん意味の汲み取りにくい、そしてあまり努力が報われそうにない一群のピアノ・ソナタを書いたのだろう?」と疑問を呈している。そしていくつかの仮説を立てるのだが、いろいろな文献を読んで(たぶん)ひとつの結論に達する。「好きだから書いた」のだと。実にシンプル。人生はこうでなくちゃ。
うまくやればいくらでも出世できたであろう天才シューベルトが、名声も金も考えずに書かれた長くていくぶん退屈な音楽。やや推測の多い話ではあるけれど、この音楽を聴きながらシューベルトの決して裕福ではなかった生活に思いを馳せずにいられない。

これが初めて聴くCDだから、他の演奏と比較してどうこうは言えない。1回聴いただけだと、なんだかぼんやりしていて、いつものシューベルト調が延々と展開しているなあ、という感想しかない。
2度、3度と聴いていると、曇り空のなかから時折顔をのぞかせる太陽のような、仄かな喜びが伝わってくる。カーゾンのピアノは渋いけれども、非常に注意深く弱音をコントロールしている。
あたり前のことだが、人生の中で聴くことのできる音楽は限られている。どういう経緯でその音楽に出会うかは縁なのだが、シューベルトのソナタはせっかくなのでいつか全部聴いてみたいと思う。




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