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フィッシャー・ディースカウのシューベルト「白鳥の歌」

2007.03.12 - シューベルト
白鳥の歌

シューベルト 「白鳥の歌」 ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ(Br) ジェラルド・ムーア(Pf)


今日は所用があって、自宅から横浜へ行き、それから大宮へ行った。
横浜といえば、みなとみらい地区の開発が盛んで、今では関東でも有数の観光地でありビジネス街であるが、横浜駅周辺も相変わらず活気があり、最近は北側港湾口もぞくぞく開発されてきているよう。
一方、今では北の玄関の誉れ高い大宮もなかなか盛ん。ここ数年集中的に大きくなっているのは横浜と同じように隣駅の「さいたま副都心」であるが、大宮駅周辺も、百貨店とか大型スーパーが林立していて、なかなか都会的。ただ、駅を挟んで両側を見ると少し風情が異なるようで面白い。西口がいわゆる現代的な近郊都市の風景とすれば、東口はそこに昭和の匂いを感じるところがある。駅前の対面にいきなり、昼から営業している立ち飲み屋を発見。建物は平屋で(もしかしたら2階立てだったかも)、つくりは下町情緒漂う小汚さがある。こういう店が高島屋の並びにあるところが面白く、一杯やりたかったがその後に用事があって断念。
今後来たときは、是非立ち寄ってみたい店であった。


「白鳥の歌」は全部で14曲からなるが、3人の詩人の作品から成る。最初の7曲はレルシュタープによるもの、次の6曲がハイネの詩であり、最後の1曲がザイドル。
もともとは「水車小屋」や「冬の旅」のように作者が連作として作ったものではなく、出版業者のハスリンガーがシューベルトの遺品のなかから見繕ったものであるらしい。なので、ストーリーや一貫したテーマがあるわけではないのだが、全曲を通して聴いても全然違和感がない。まるでシューベルトが最初から連作として作ったものであるかのように聴こえるのだ。
これは彼の晩年の作風の色彩が似ているということか、もしくはハスリンガーのセンスが抜群だったのか。

曲は全部いいが、詩人によってそれぞれ曲の雰囲気が微妙に違っている。レルシュタープの詩によるものは、抒情的で若々しい。「セレナーデ」が有名だけど、私のお気に入りは「愛のたより」。
ハイネのものは全体的に重量感がある。「アトラス」の悲壮感は鮮烈な衝撃。「影法師」は「ライアー回し」に通じるような寂寥感いっぱいの曲で、これを聴いただけで100日くらい寿命が縮まるみたい(恐怖新聞か!)。でも、そのあとにすうっと入ってくるザイドルの「鳩の便り」の、ほんわかして暖かく、ふくよかな音楽に救われるのだ。

F・ディースカウの「白鳥」は、ブレンデルが伴奏のものを長らく好んで聴いてきた。技巧よりも情感を重視した歌はずっしりと重い聴き応えがある。最近、ムーアとのものを聴いたら、こちらのほうも気に入った。ディースカウの声は軽やかで如才ないが、その如才なさが鼻につかず、ストレートに心に入ってくる。彼の「水車小屋」の歌いぶりは正直言ってあまり好きではないのだが、この曲では私にぴったりハマッテしまった。
そしてムーアのピアノ。なんて謙虚なのか。自己主張がないところが自己主張、といった按配のピアノであり、それは歌手にぴったりと寄り添った見事なサポートである。





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Comment

無題 - mattina

こんにちは!私もシューベルトの歌曲、大好きです。子供のころ、歌詞カードを見ながら、よく歌っていました。もちろん、ディースカウのものでした。

ハイネの詩に歌をつける作曲家は多いのでしょうか。メンデルスゾーンの「歌の翼に」もそうですよね。

私もムーアのピアノ、大好きです。昔から大ファンでした。

ところで、リンク集にリンクさせていただきました♪ これからもどうぞよろしくお願いします!
2007.03.13 Tue 15:54 URL [ Edit ]

Re:mattinaさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

私もシューベルトの歌曲が大好きで、男声によるものはF・ディースカウの全集を揃えてしまいました。10年以上経ても全曲聴き通せていないのですが(笑)。
ハイネの詩につける作曲家には、有名なところでは他にシューマンがいますね。ハイネの詩によるリサイタルも時折催されるようです。
ムーアのピアノはいいですね。普段は安全運転だけれど、本気を出せばF1ドライバーなのではないでしょうか(!?)
2007.03.13 22:17

無題 - Niklaus Vogel

吉田さん、こんばんは!
ジャケット写真を見てびっくりしました。「Ⅵ」ということは、DGの全集ですね!すごい!
シューベルトには申し訳ないのですが、所謂3大歌曲の中では、出版社が寄せ集めたという「白鳥の歌」がもっとも好きです。(おまけに、3大バレエでは「白鳥の湖」(爆)。)
私の愛聴盤はホッターのEMI盤ですが、そこでもムーアの滋味深いピアノを聞くことができます。
このエントリーに影響を受けてか、私も今週はシューベルト、そして「白鳥の湖」(←すごく強引)となります。
吉田さんが、次回の「ピアノ協奏曲」に何をもってくるのかドキドキして眠れません。(実はあるCDを探していてこんな時間となってしまいました。相変わらず睡眠不足です…(汗)。)
またよろしくお願いいたしますm(_ _)m
2007.03.14 Wed 03:35 URL [ Edit ]

Re:Niklaus Vogelさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

若気の至りというか、魔が差したというか…。購入してから十数年経ちますが、まだ全然聴けていません。私には身分不相応の買い物だったようです(笑)。でもまあ、せっかくなので、いずれは全曲聴いてみたいものです。
他の2曲はもちろんいいのですが、「白鳥の歌」も負けず劣らずいいです。元々は「レルシュタープの7つの歌曲」、そして「ハイネの6つの歌曲『帰郷』」というそれぞれ別の歌曲集として構想されたらしいです。文字通り最晩年の作で、歌曲として熟成されつくした味わいがあります。

次回は「ピアノ協奏曲」ですね。といってももう明日ですか。何にするか迷うところですが、私は相変わらずオーソドックスな選曲になりそうです。Niklaus Vogelさんがまた意外性のある曲をもってくるのではないかと楽しみです。
2007.03.14 23:17

無題 - mattina

また、面白い記事がアップされていないか、来ました。ムーアはF1ドライバーにもなり得るというのは、そうかもね、と私も同感です^^

あと、相互リンク有難うございました!
2007.03.14 Wed 17:04 URL [ Edit ]

Re:mattinaさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

>また、面白い記事がアップされていないか、来ました。
わざわざ来ていただき恐縮です。昨日に続いて本日も記事を書けそうにないです(酔っ払っちゃったので、そろそろ寝ようかと…)。
明日は書くつもりです。面白いかどうかわかりませんが、また遊びに来ていただけたら幸いです。
2007.03.14 23:22

無題 - mattina

こんにちは~。明日新しい記事がアップされるとのこと、楽しみにしています。

私のところにもお暇があれば覗きに来てくださいね♪
2007.03.15 Thu 16:16 URL [ Edit ]

Re:mattinaさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

毎日のコメント、感謝です。
昨晩は痛飲し撃沈しましたので記事を書けませんでしたが、本日はなんとか。
また、お寄りください。
2007.03.16 22:06

無題 - miwaplan

おおー、大宮まで来られましたか。
私は岩槻在住ですので、すぐお隣です。
大宮・浦和は、CD漁りのテリトリーですので、しょっちゅう出かけてます。

大宮駅の西口も、私が高校生の頃は、昭和の雰囲気いっぱいで、うすよごれた飲み屋さんが軒を連ねていたものです。今の整備されたビル群はまだ無くて、東口と通じる細いトンネルがあったんですよ。音楽と関係なくてスミマセン。
懐かしく、昔を回想してしまいました。
2007.03.16 Fri 23:25 URL [ Edit ]

Re:miwaplanさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

最近、ちょくちょく大宮を訪れているのです。駅の周辺は華やかだし、いろいろな電車が見られるし面白い街です。
岩槻といえば東武野田線ですね。何度か通ったことがありますが、あそこも大きな駅ですね。そこに古きよき雰囲気が混在しているようで、一度一杯やってみたい場所でありマス。
2007.03.16 23:44
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