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カンテッリのシューベルト「交響曲第9番"グレイト"」

2009.09.19 - シューベルト

sc

シューベルト 交響曲8,9番 カンテッリ指揮NBC交響楽団


冒頭のホルンが実に朴訥でいい響きである。ほのかに木の香りが漂ってくるよう。ヨーロッパの田舎オーケストラでたまに聴くような音だ。ときは半世紀前、国際都市ニューヨークの古めかしくも雅な顔である。といいつつ引き続き聴いていくと、キレと洗練さが際立ってくる。やはりこれは都会のものなのかなと感じるのは、演奏家を予め知っているからなのだろうな。
第一主題は、まるで象のスキップのよう。響きは重厚なのだけど、とてもリズミカルだ。ティンパニもブラスもよく鳴っていて、はち切れんばかりの覇気に溢れている。今では慣れた提示部の反復はない。ただでさえ長い曲だし、ときは50年代、反復を好まなかった時代であるようだ。
2楽章はいくぶん速め。これがシューベルトの思い描いていたスピードなのかどうかわからないが、これを聴くと何故かベートーベンの7番のアレグレットを思い出す。毅然としていてさわやかな風のよう。中間部もやや速め。感傷の匂いは淡く、一気呵成。
3楽章でも勢いは衰えない。覇気のある骨太の弦に乗っかって、木管が軽やかに歌う。トリオでも管楽器は雄弁。ソロはそれぞれうまいし、適度な分散というかバラバラ感が心地よい。音に広がりがある。
終楽章も勢いは止まらない。この曲においては単純なリズムの反復が多く聴かれるが、この楽章ではホルンを中心とした金管群が、延々と続く単純なリズムをじつに辛抱強く吹き抜いている。最後まで集中力の途切れない体力は、だてにトスカニーニに鍛えられたわけじゃないというところか。竹を割ったような気持ちのいいシューベルトである。
録音はまずます。50年代前半としては中くらいといった感じ。ラストはフライングの拍手入り。

1953年12月27日、ニューヨークでの録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

吉田さんのレパートリーは本当に広いですね
マエストロ・トスカニーニは、カンテッリを自分の後継者として強く推薦していたようですね。

53年の録音というと、まだマエストロ・トスカニーニが存命中の頃の録音ですね〜。
マエストロも、8番(9番)の録音が残っています。爽快なシュベルトです。マエストロの演奏と聴き比べてみたいものです。

ミ(`w´彡)
2009.09.19 Sat 09:48 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

広く浅いのでいろいろ聴いているように見えるかもしれません。ことに最近はCDを選ぶ基準がまず第一に「廉価」なので、ジャンルはバラバラになりがちです。

この演奏当時マエストロ・トスカニーニは存命ですね、この演奏をどうみていたのでしょう。
「グレイト」は好きな曲なので比較的多くCDを集めていますが、マエストロのはまだ未聴です。同じオケなので聴き比べが面白そうです。
2009.09.19 18:03
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