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天国までの百マイル、カラヤン、ばらの騎士

2012.02.08 - R・シュトラウス
rs

シュトラウス「ばらの騎士」 カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団


浅田次郎の「天国までの百マイル」は、借金まみれの主人公が病気の母親に手術を受けさせるために奔走する話。
主人公がいい奴なのか悪い奴なのか、判然としない。また、その兄弟たちもそう。主人公の愛人と最後に出てくる医者はたぶんいい奴だが、他の登場人物は、善悪という意味ではキャラクターがつかみづらい。たぶんあえてそういう筆致で描いている。
人生はカネじゃないけどカネはいる。しかるに、人間は良くてまた良くもないと。








カラヤン盤のライナーによれば、「ばらの騎士」の舞台は1740年ころのウイーンとある。
ハイドンやマリア・テレジアが活躍していた時期であり、モーツァルトやマリー・アントワネットはまだ生まれていない。フランス革命がくるまでのヨーロッパ爛熟期ということになる。
意地悪く言えば、貴族がでかいツラをしてのさばっていた頃。もうすぐ革命が起こってみんな木端微塵だぞコノヤロー! などと僻みつつも、考えてみれば言語も国も時代も食い物も衣装もなにもかもが違うからこそ、面白さがあるんだろうな、とも思う。
わけのわからないものばかりなんだけど、最後は「人情や機微は国や身分を超えるんだよ。目もふたつだしな」なんてオチで締めくくって泣かせるわけだ。
そういう楽しみが、「ばらの騎士」には溢れている。
カラヤンの最初のセッション録音を聴くと、18世紀のウイーンはこんな雰囲気だったのか、と思わされずにいられない。これが本当に18世紀なのか、ウイーンなのか、もちろんわからないんだけど、とにかく匂いが濃い。外人の体臭と香水が入り交ざったような、あれである。
この匂いがロンドンのオーケストラから発散されているところが、この録音のスゴさで、最初から最後まで、怪しい芳香を放ってやまない。
指揮者の手腕であろう。歌手も違和感なく管弦楽に溶け込んでいる。
またここでは、ほんわかとしたEMIの録音がうまくいっている。下手なデジタル録音よりよほどいいものだ。


マルシャリン:エリーザベト・シュヴァルツコップ
オクタヴィアン:クリスタ・ルートヴィヒ
オックス男爵:オットー・エーデルマン
ゾフィー:テレサ・シュティヒ・ランダル
ファーニナル:エバーハルト・ヴェヒター、他
フィルハーモニア管弦楽団・合唱団


1956年12月、ロンドン、キングズウェイ・ホールでの録音。
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Comment

白亜の病院 - yoshimi

「天国までの百マイル」は、7年前くらいに私が初めて読んだ浅田本です。
本は読んだことがなくても、映画になっていたことは知っていて、タイトルだけ覚えてました。

この本は、私には結構面白かったです。
病院に着くまで前段のリアルな人間世界の話は、どこにでも転がっていそうな話が多いですねー。
サンマルコ病院に到着した後は、文字だけ読んでも、現実離れした白っぽいイメージがして、天国的な雰囲気的が漂ってきます。
曽我先生のようなお医者さん、現実世界ではいるかどうかどうかわかりませんが、脇役ながら藤本先生は好きなキャラクターでした。
2012.02.10 Fri 12:37 URL [ Edit ]

魚がうまそうでした。 - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんにちは。

この本の登場人物は、みんないいヒトのように思えてしまいました。別れた妻はもちろん、ふたりの兄とか兄嫁とか、まあ、深くおつきあいはしたいと思わないけど、そこそこの善人じゃないかと。
曽我先生というのはスーパーマンですねえ。知り合いになりたいものです。藤本先生はリアルな味があります。
2012.02.11 18:30
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