チャイコフスキー 「眠りの森の美女」 ムーティ指揮フィラデルフィア管弦楽団年上の友人から、ワグネル・ソサィエティーのOBオーケストラの演奏会に招待された。ありがたいことである。いそいそとみなとみらいの街に繰り出した。
この日のプログラムは、チャイコフスキーの「ロメオとジュリエット」、「眠りの森の美女」組曲、そしてメンデルスゾーンの「スコットランド」の3曲。
あとの2曲は技術的に難しいとされているし、「眠り」は有名なわりにはあまり演奏会に取り上げられない曲だ。だから楽しみにしていたし、そのチャレンジ精神にはスーパー仁くんを差し上げたい。
なかでは「眠りの森の美女」が良かった。「バラのアダージョ」においてのハープ・ソロのテクニックは完ぺきといえたし、とろけるような音を堪能できた。ハープのソロを聴ける機会もそうそう多くはないので、これはご馳走。
「長靴をはいた猫と白い猫」では、フルートとファゴットが見事な吹きぶりで、幻想的な雰囲気をつくりあげていた。
指揮者は大山平一郎。現在はサンタ・バーバラ室内管の音楽監督を務めていて、ジュリーニ時代のロサンジェルス・フィルでは主席ヴィオラを弾いていたとのこと。
大企業の役員みたいな風貌をもちつつ、ときおり大きな唸り声を発したりして、指揮ぶりは熱いものがあった。
コンサートの余韻が残るなか、ムーティによる演奏で同じ曲を聴く。いままで聴いた組曲のCDでは、ムラヴィンスキー、オーマンディに並んで素晴らしいように思う。
自然な緩急をつけながら、場面ごとの表情に深みを出している。細心にして大胆。
フィラデルフィアの豪華できめの細かな音色はもちろんここでは効果的、というか、チャイコフスキーのバレエ音楽との相性はたぶん世界一でしょ(競合相手は、コンセルトヘボウ、ロンドン響あたりかな?)
こうして聴き比べてみると、あたかも高校野球の地区予選を観戦した後に、テレビでメジャーリーグを観るような趣がある。
テレビという枠ではメジャーの圧勝だけど、高校野球を生でみる感興が捨てがたいことは言うまでもないのである。
1984年2月、フィラデルフィア、フェアマウント・パーク、メモリアル・ホールでの録音。
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