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オーマンディのR・シュトラウス「ツァラトゥストラはこう言った」

2010.08.28 - R・シュトラウス
   
r
 
オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団


城山三郎の「そうか、もう君はいないのか」を読む。
学生時代に名古屋の図書館で出会った場面がとてもみずみずしい。まったく偶然の出会いであり、あたかもトレンディ・ドラマ(古いか)のようにドラマチックな出だしであるが、実直な筆なので陳腐な感じはしない。
その後いろいろあってちょっとブランクはあくものの、無事、というか予定調和的にこのふたりは一緒になるといった展開。このあたりも、まるで小説を思わせる。
夫婦生活というものはいつも波乱万丈なわけではないから、話は、ちょっとしたエピソードを挟みつつ、晩年にすっとんでゆく。
そうして奥さんは病気になって、なんともあっけなく亡くなってしまう。なんとも言い難い喪失感と悲しさ。これは、本文に書かれていない部分、つまり毎日延々と繰り返される退屈で平和な日常生活を想像することで、じわじわと実感してゆく。その何十年間のあいだに、ふたりで共有した楽しかったことや悔しいこと。そうした、なんということのない日常が、書かれていないのに手に取るようにわかるのだ。
男は弱いね。江藤淳もそうだったけど。ワタシも奥さんが死んだら、すぐ後を追うかもしれないな。


「ツァラトゥストラ」。この曲、この3,4年にようやく面白さがわかってきた。
学生時代は軽くみていて、ご多分に漏れず、冒頭だけが目当てだった。その風向きが変わったのは、実演を聴いてから。尾高忠明指揮東京フィルの演奏でだ。全部通してもまあまあ聴けるじゃん、などとわけのわからんことをのたまっていたことを覚えている。
その後しばらく忘れていたが、ここ数年、たまたま縁があって、というには大げさだが、何枚かの演奏を聴く機会があって、いよいよこれはいい音楽であると感じた次第。
オーマンディのこの演奏は冒頭のオルガンがスゴイ。序奏のティンパニの連打のあとの最後の響きは、華麗にして凶暴。オルガン特有の長い残響の間にため息が出る。その後もオーケストラのパワフルな響きを生かして、実に色彩豊かな世界を繰り広げてゆく。
ニーチェの原作と比べてどうかというのは愚問だろう。アレはアレ、これはこれ。同じ山奥でも「アルプス・シンフォニー」を聴くよりよほどいいと思う。


1979年10月24日、フィラデルフィア・オールド・メットでの録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんばんは

城山さんも奥さまに先立たれていたんですね
晩年、げっそりと痩せられていながらも、言論の自由を守ろうとしておられる姿には感銘を受けたものですが〜。奥さまとは名古屋の図書館で出会われたのですね、知りませんでした〜。

オーマンディ師の「ツァラツゥストラ」持っております。確かに冒頭のオルガンの音は豪快ですね〜。タイトルはニーチェからいただいているのでしょうが、その内容はシュトラウスの創造の産物でしょうね。この曲は冒頭しか有名ではありませんが、中間部、後半など、美しい旋律がこれでもかと出てくる点、やはり名曲の一つでしょうね〜。フィラデルフィアは本当に上手いと思いますね〜。

ジュリーニ・ロス・フィルのボックス、注文しているのですが、いくつかのものと合わせて注文している都合上、まだ手元には届いておりません。早く聴きたいのですが〜。

▼・。・▼
2010.08.30 Mon 18:07 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

城山三郎は、企業小説というものを確立したヒトではないかと思います。書いている方は他にも、いろいろおられますが、城山さんほどのボルテージはなかったように思います。
この本、出会いのシーンがみずみずしくてとてもよいですよ。

オーマンディ師の「ツァラツゥストラ」は今回初めて聴きました。管弦楽の面白さを余すところなく伝えてくれる演奏です。
最近、この曲はすごい名曲なのではないかと思い始めました。交響詩のなかで一番好きですね。

ジュリーニ・ロス・フィルもぜひお聴きになってくださいね!
2010.08.30 22:26
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