カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 ロスアンジェルス・フィル箭内道彦の「サラリーマン合気道」を読む。
やりたいことなんて特にない。人に流されるままに生きている。
多くのビジネス本にかかったら、「それじゃダメだ、すぐ変えなさい」と叱られてしまうところだが、著者はそれを逆手にとる。
そのままのスタンスでビジネスはやってゆけると。それが「サラリーマン合気道」。「はじめに」で著者は宣言する。
「自分ひとりで思いつくことなんてあまりにも小さい。目の前の相手と向き合ってそこから生み出せばいい。そのことに気がついて僕は少し楽になりました。流されるからこそ遠くに行けるのだと。」
著者はCMのクリエイターというちょっと特殊な商売だから、書いている内容はすべてのビジネスマンに当てはまるものではないけれど、参考になるところは多かった。最近読んだなかでは面白いビジネス書である。
もう少し続くよ、ジュリーニとロス・フィル。
このコンビの「英雄」も長らくLPで聴いてきたが、音質に問題があった。37分を超える1、2楽章をA面に収録した詰め込み録音だったので、うちのプレイヤーで再生すると円盤の内側にいくにつれ、つまり2楽章の後半あたりから徐々に音が割れてきて、どうにも聴きづらいものがあったのだった。
だから、正直言ってあまりいい印象はなかったのだが、改めてCDで聴くと、悪くない。ぜんぜん悪くない。
ゆったりとしたテンポで朗々と流れるベートーヴェン。筋肉質でスリムなフォームだから遅くても弛緩しない。内声部を明確に鳴らしているところはロス・フィルとの5番、6番と同様のやり方だ。すっきりと見通しがよい。
LPで聴いていたときは全体的にドライな音響だと感じていたが、CDで聴くと、残響はむしろたっぷり目であり、ふくらみと潤いが感じられる。ロス・フィルのいくぶん乾いた響きと、うまく合っているように思う。
1978年11月、ロス・アンジェルス、シュライン・オーディトリアムでの録音。
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