1曲目のモーツァルト「劇場支配人」序曲からヴァイオリンは5プルトの重量編成。
いまどき大人数のモーツァルトははやらないかもしれないけれど、弦のたっぷりとした厚い響きがおいしい。気に入っている20年以上前の、カラヤンのスタイルを思い出す。
次にやったピアノ協奏曲23番は大好物。モーツァルトの多くの名曲のなかでも、最高峰に位置する音楽ではないかと思う。ことに終楽章の軽やかさとスピード感、そして変化の多彩さにおいてこの曲に匹敵するものはなかなかないと思う。
23番の多くの演奏においては、オーケストラは小ぶりな編成で挑むが、この日はコントラバスは7台揃った錚々たるもの。
とはいえ、あからさまに低音を強調したものではなくて、ひたすら縁の下の力持ちに徹した演奏である。テンポは軽やかであり、編成の重さを感じさせない。
三船優子のピアノは細かな表情をつけながらオケとのバランスをうまくとっていて、見通しがとてもよい演奏。2楽章では微妙に変化するが流れに沿っているので違和感がない。ことに、左手による歯切れのよい低音と、たっぷりとした広がりのある中音部の響きがいい。
終楽章はもっとも好きな曲のひとつである。ピアニスト、指揮者ともども快速なテンポで走り抜けた。難所のファゴットも、まろやかな音で応えていた。
最後はベートーヴェンの第7。コントラバスを8台に増強。
全体に比較的速いテンポで押し切っていた。気がついたのは、1楽章と3楽章において反復を実行したことと、2楽章における主旋律の最後のずり下がり。C・クライバーの影響を濃厚に感じた。
冒頭からティンパニの音量が強くてややとまどったが、終楽章になってからは徐々にオーケストラに溶け込んでいった。
全体的に、ヴァイオリンを始めとした弦楽器群がよかった。ことに遅いテンポの箇所で、ときおりハッとするような、つややかな音色を聴くことができた。チェロとコントラバスは、ぐっと抑えて土台を支えていた。
2009年11月29日、すみだトリフォニー・ホール。
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