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ウラッハのモーツァルト「クラリネット五重奏曲」

2009.11.28 - モーツァルト

bo

モーツァルト「クラリネット五重奏曲」 レオポルド・ウラッハ(Cl)ウイーン・コンツェルトハウス四重奏団


織田作之助の「夫婦善哉」を読む。
おいしそうなシーンが目白押し。いまでいう「B級」グルメが盛りだくさんである。冒頭を読んだだけでも一杯やりたくなる。
「路地の入口で牛蒡、蓮根、芋、三ツ葉、蒟蒻、紅生姜、鯣、鰯など一銭天婦羅を揚げて商っている種吉は借金取の姿が見えると、下向いてにわかに饂飩粉をこねる真似した」
スルメのてんぷらなんて食べたことはないが、なんだかうまそうである。
甲斐性のない旦那が嫁を連れ歩くシーンもたいへんそそる。
「よくて高津の湯豆腐屋、下は夜店のドテ焼き、粕饅頭から、戎橋筋そごう横「しる市」のどじょう汁と皮鯨汁、道頓堀相生橋東詰「出雲屋」のまむし、日本橋「たこ梅」のたこ、法善寺境内「正弁丹吾亭」の関東煮、千日前常盤座横「寿司捨」の鉄火巻と鯛の皮の酢味噌、その向い「だるまや」のかやく飯と粕じるなどで、何れも銭のかからぬいわば下手もの料理ばかりであった」
このあと、重要なシーンで有名な「自由軒」のライスカレーも登場する。
B級万歳。


ウラッハとウイーンのモーツァルトは重厚だ。
もったりとした録音も当時のウイーン風なのだろうか、これも拍車をかけているようだ。
ウラッハのクラリネットは、21世紀の今ではあまり耳にすることのない独特の味がある。やや重くて野太とい音色は、ひとつの楽器から出てくる音としては破格に厚い響きであるように感じる。
それはもうブラームスにはじつにぴったりといった風情なのであるが、こういう感触のモーツァルトもまた一興でありユニークで面白い。
ウイーン・コンツェルトハウスの演奏も、じつにまったりとしている。一杯飲んだら胃が痛くなりそうなウインナ・コーヒーのように、強烈に甘くて濃い。モーツァルトによく聴くことのできる軽快さというものは、ここでは手控えられている。
だから、速い曲よりもゆっくりとした楽章に合っていると思う。
2楽章のラルゲット。いろいろなものをあきらめながら長く生きてきて、さすがにすこしくたびれて一段落しているような演奏。
仕事の疲れが残る土曜日にキク演奏である。

1956年の録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

織田作之助の「夫婦善哉」大昔に読んだような記憶があるのですが〜、はっきりしません。
「一銭天麩羅屋」映画でも覚えていますが、私の子供の頃は、商店街には必ず天麩羅屋があったものです。しもた屋にもあったようなおぼろげな記憶があります。

あそこで描かれている大阪の下町はもう完全になくなってきていますし、道頓堀近辺の料理屋もほとんど消えてしまっています。芝居を観た帰りに、何か食べたいなと思って店を探したのですが、チェーン店の飲み屋か、風俗店しかありませんです、爆〜。ラーメン屋とたこ焼き屋はあるんですが〜。

ウラッハのクラリネットは懐かしいですね〜
あの音はやはり、あの時代の楽器の音ではないかなと思います。今朝、私もウィーン・コンツェルトハウスの演奏を聴いていたのですが、何とも言えずチャーミングですよね〜。しかもかなり上手いですよ。
私はヴィーンのクラではプリンツさんが一番好きですが〜。

ミ(`w´彡)
2009.11.29 Sun 09:52 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。
「夫婦善哉」はB級グルメの宝庫ですね。天ぷらの屋台なんてぜひ行ってみたいし、クジラの汁や関東煮なんてところもそそられます。
あのあたりの下町はなくなっていますか。あの描写は戦前のものなので致し方ないのですかね。
しかしチェーン店ばかりの昨今の風景はさびしいものがあります。

ウラッハのクラリネットは濃いですね〜。
ウイーン・コンツェルトハウスの音ともよく合っているように感じます。テンポもゆったりしていて、時間がゆっくりと流れます。気分が落ち着く演奏です。
2009.11.29 10:58
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