東京ユヴェントス・フィルハーモニックの定期演奏会に行く(5月29日、ティアラこうとう)。
指揮:坂入健司郎
ベルリオーズ「イタリアのハロルド」
ヴィオラ:安達真理
チャイコフスキー 交響曲6番「悲愴」
演奏は前半のベルリオーズが良かった。
ヴィオラの安達はチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の主席奏者だと書いてあるので期待した。文句のつけようのないヴィオラは、音楽の主軸であった。
弓と弦とを、ほんの僅かだけ接触させているかのように繊細で滑らかな音から、ときにはグラマラスな響きをたっぷりと鳴らせた。
この曲を生で聴くのは初めてだったが、少なくとも3楽章までは、パガニーニが匙を投げるようにヴィオラの出番が少ないわけではないことを感じた。
4楽章でヴィオラが一区切りついたとき、奏者が袖に引き上げたので、この曲はこういうものなのかと納得したが、その後2楽章のメロディーをヴィオラとヴァイオリン、チェロが弾いたとき、上から音が聴こえたので、見上げると彼女らは2階のバルコニーで弾いていたのだった。粋な計らい。
指揮者はソリストにぴったり寄り添い、万全のサポート。
ラストは、バーンスタイン並みに猛烈なアッチェレランドをかけ、吹雪のように終結。
熱い指揮者だ。
チャイコフスキーは木管楽器群とチューバが良かった。とりわけクラリネットは、蕩けるようにまろやかな芳香を燻らせ、これは心の琴線に触れないわけにいかなかった。
このオーケストラは2008年に「慶應義塾ユースオーケストラ」として誕生、その後、より幅広い年齢層を加えて、現在に至るという。
とはいえ団員のほとんどは大学生くらいの若手。
荒削りのところはあるものの、無限の未来が、勢いのある演奏に反映されているようで、気持ちが良かった。
春。
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