アマデウス四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲8番「ラズモフスキー2番」を聴く
(1959年4-5月、ハノーファー、ベートーヴェン・ザールでの録音)。
以前にここで、アマデウスSQのアンサンブルは緩い、と書いたが、続けて聴くうちに慣れてきた。
あまりギチギチではないところが、ホッとする。牧歌的な味わいさえ感じる。
ベートーヴェンの、いわゆる中期と云われるところの弦楽四重奏曲は、7番から11番まで。どれも副題がついているから、なんとはなしに親しみやすさがあるものの、交響曲やピアノ協奏曲に比べれば晦渋だろう。
それだけに、楽しく聴きこなせるようになったらしめたもの。その勢いを駆って12番以降の「後期」に足を踏み出してみる。ここまでくると、どれがいいとか悪いといった議論は不要。どれもが宝である。
さて「ラズモフスキー2番」は、3つ書かれたうちのなかでは、もっとも哀感を湛えた作品であるように感じる。
それをアマデウスは、手作りの工芸品のようなゴツゴツとした暖かい感触を保って演奏している。人間の息吹が生々しい。
2楽章のモルト・アダージョには「深い感情をもって」との但し書きがある。ヴァイオリンが奏する旋律は、快感に悶えるソプラノのアリアのよう。官能的。
4楽章プレストは勢い重視、4つの楽器が少年のように躍動している。ラストは突風が吹きすさぶように終結する。
ノーバート・ブレイニン(第1vn)
ジークムント・ニッセル(第2vn)
ピーター・シドロフ(va)
マーティン・ロヴェット(vc)
春。
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