オーケストラ・ダスビダーニャは、ショスタコーヴィチばかりを演奏するオケであるらしい。アマチュアならではの荒業である。
今回このオケを初めて聴いたが、随所に手練れの頼もしさを感じた。
1曲目は、「森の歌」。
約30年ぶりに聴いた。単純なリズムを基調とする派手な音楽で、私の中では「カルミナ」と同列に括られる音楽だ。
この曲で思い出すのは、CMである。当時、王さんは「ナボナ」のコマーシャルをやっていていたのだが、その中で「『森の歌』もよろしく」というフレーズがあるバージョンがあった。
「おお、王さんがショスタコを宣伝している」というわけで、よく覚えている。
「ナボナ」はわりと高級品であったから、姉妹品である「森の歌」も結局食べたことはなかったが、代わりにスヴェトラーノフだか誰かのLPを聴いて溜飲を下げていたのであった。
それはさておき、実際に演奏者が舞台に上がった様子はなかなか壮観なもの。オケはコントラバス11本、チェロ10本、ヴィオラ12本と低音を厚くした編成であり、混声合唱に加えて少年少女合唱もいて舞台はぎゅうぎゅう詰め。その大オーケストラがうなりをあげて咆哮する音楽が、2100人収容する大ホールを埋め尽くした。
2曲目は、交響曲第10番。
まんべんなくソロ楽器が活躍するので、奏者の技量がはっきりわかる曲である。オーボエ、フルート、ピッコロ、ファゴット、クラリネット、ホルン、トロンボーン、トランペット、ティンパニ、小太鼓、大太鼓、シンバル、マリンバ、タムタム、ヴァイオリン。
どれも見事に吹ききって、弾ききっていて、危なげが見当たらない。ことにホルンの長いソロ。まろやかな音色がよく響いていて、聴き応えじゅうぶん。ピッコロはピリッと小回りが効いており大きな存在感がある。
このダスビダーニャを聴いて、朝比奈隆と大阪フィル、そしてチェリビダッケとミュンヘン・フィルのブルックナーを思い出した。
これらも、一時期は専門といっていいような頻度で、ブルックナーという作曲家を取り上げていた。
演奏のレベルは高いものだったが、ことに大阪フィルのこのうまさはなんなのだろうと考えた。
それは、作曲家の技術的なクセというか文法が身体にしみついたからなのではないか。作曲家独特の節回しや間というものを、繰り返し演奏することで身についた結果、瑕疵の極めて少ない演奏が可能になったのじゃないだろうか。演奏は、そういったテクニカルな要素が大きいのであって、むしろ作曲家の精神を理解するとかいうような抽象的なことよりも、重要なのではなかろうか。
ヨタ話はさておいて、このオーケストラの技量は、いままで聴いたアマオケのなかで最上である。
ショスカコーヴィチに関しては、在京のプロは顔負けなのじゃないだろうか。
2009年2月15日、東京芸術劇場。
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