忍者ブログ

クーベリックのマーラー「交響曲第8番」

2007.07.15 - マーラー
kubelik

マーラー交響曲第8番 クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 他


吉田秀和の「名曲のたのしみ」は昨日からチャイコフスキー。しかし、初回からピアノ協奏曲2番と「悲愴」ということは、このシリーズは短期間なのだろうな。
「悲愴」はメンゲルベルクの演奏。吉田の学生時代の思い出の演奏だという。思ったより音質がいいので少し驚いた。そのせいかどうかわからないが、始まってまもなく夢に落ちてしまった。


勝手にクーベリックの日


クーベリックは私にとって夢に終わった指揮者である。
作曲に専念するといって一旦は指揮者を引退するものの、チェコスロヴァキアが自由化されると「プラハの春」音楽祭で復活し、91年には日本にも来て話題になった。
このチェコ・フィルとの演奏会を、ついに行くことができなかった。
バーンスタインのマーラーも、クライバーのブラームスも、ブーレーズのストラヴィンスキーも難なくチケットを取れたものだったが、このクーベリックは駄目であった。何人かの手で入手を試みたがカスリもしなかった。思っていた以上の人気の高さに驚いた。
このコンサートの模様は、後日にNHKでテレビ放映され、ビデオに録画して何度も観た。
これは涙なくしては観られない、掛け値なしの歴史的コンサートである。
終曲「ブラニーク」にてホルンで奏される「汝ら神の戦士たち」が鳴ったときの高揚感は他の何にも代えがたい感動がある。それからじわじわと進むにつれ、クーベリックが目に涙を浮かべながらコラールを全奏するくだりは、何度観てももらい泣きしてしまう。「我が祖国」という曲を、さほど優れたものではないと思うのだが、この演奏だけは特別で、音楽のもつ力に圧倒されてしまうのだ。
本当にこのコンサートには行きたかったものだが、果たせず、いまだに悔やんでいる始末である。


最近彼の演奏で気に入っているのは、マーラーの8番。ずいぶん前に完成された全集のなかのひとつである。静かな情熱を持って端正なフォルムを淡々と築くスタイルは、同時代の他の演奏家に比べると地味かも知れないが、この大曲に対する全体の見通しのよさはショルティと比肩するし、バランスの良さでは勝っている。
第1部でのラストでは、ぐっとテンポを落とした合唱の、波のように押し寄せる圧倒的迫力を見せてくれるが、むしろ聴きどころは晦渋な第2部にある。F・ディースカウ、クラス、マティスのそれぞれ個性的で華のある歌も素晴らしいし、管弦楽の透明な清らかさにひきつけられる。ここで聴くことのできる透明感は、マーラーの他の作品からはなかなか聴きとることのできない、明るい雰囲気に満ちたもので、聴いていてひとときの幸福感に包まれるのだ。
PR
   Comment(5)   TrackBack()    ▲ENTRY-TOP

Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます

吉田さんの「名曲の楽しみ」チャイコフスキーに変わったんですね、我が家ではFMが入らないんですよ、電波の問題なのかもしれませんが~。

クーベリック、私も聴けずじまいでした。確か70年代にバイエルンと来日していると思うのですが、その頃はまったく興味がありませんでした。

それ以降、マーラーなどを好んで聴くようになったんですが~。この8番、良いですよね。歌手陣は豪華ですし、CD1枚に収まっているところも凄いですよね。でも、速いと思わせるところがありませんよね。不思議ですよね、沖縄でバーンスタインの8番も聞いたのですが、クーベリック盤の方が良いなって思いました。

ミ(`w´彡)
2007.07.16 Mon 09:05 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

「名曲の楽しみ」チャイコフスキーに変わったんですが、1回目から悲愴なので、あまり長くはないように思います。
CDで聴くかぎり、この指揮者はわりと生とスタジオとの差が大きい指揮者なので、ライヴを聴いてみたかったのです。
クーベリックの8番はrudolf2006さんが紹介されていたので聴こうと思ったのです。第2部がいいですねー。この長い楽章、いつもはもてあますのですが、この演奏は聴き入ってしまいました。録音も充分いいと思いました。
2007.07.16 11:03

無題 - ダンベルドア

こんにちは

マーラーの8番は長く感じてしまいなかなか食指が動きません。
クーベリックのけれんみのないマーラーは、そんな第8番のチョイスとして良いかなと思います。

>ここで聴くことのできる透明感は、マーラーの他の作品からはなかなか聴きとることのできない、明るい雰囲気に満ちたもので、聴いていてひとときの幸福感に包まれるのだ。

こういうマーラーを求めたいです。
2007.07.16 Mon 11:23 URL [ Edit ]

Re:ダンベルドアさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
マーラーの8番は第2部が長いですね。いつももてあましてしまうのですが、このクーベリック盤は飽きずに聴きとおすことができました。歌手がみんな良い歌を聴かせてくれるし、オーケストラも落ち着きのある響きを出していていい味を出しています。
録音が意外によいです。最強音でもビリつかないし、静かなところではしっとりとしていて、全体に安心して聴くことができます。
2007.07.16 11:31

無題 - ruiros2019

クーベリック/バイエルン放響のマーラーはやはりLPの2枚組国内盤の悲劇的/第10番が初です。
正直、物凄く良い演奏だと思いました。CD化されたものが例のオリジナルイメージプロセになってなかったようでがっかりしてしまいました。
今あまり聴くことがないですが、わたしのマーラーCDディスコグラフは
復活バーンスタインNYO`87
第5番バーンスタインVPO`87
悲劇的テンシュテットLPO`83
第9番バルビローリBPO`64
第10番インバル/フランクフルト放`92
のみです。
2007.09.07 Fri 13:33 [ Edit ]

Re:ruiros2019さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

クーベリック/バイエルン放響のマーラー、6番はまだ聴いていません。いいですか。しかしCDが良くないとなると、なかなか入手しづらいですね…。
クーベリックのマーラーは総じて渋い演奏になっていますが、この8番はバランスのいい鮮烈な演奏で気に入りました。

私はマーラーを比較的よく聴くのですが、ショルティ、テンシュテット、インバルあたりを聴くことが多いです。曲によってはアバド、ワルター、バーンスタイン、バルビローリ、シノーポリ、ジュリーニ、ノリントンなどにも食指を動かすと。
マーラーにはいい演奏のCDがたくさん出ていて、追いつけません。
2007.09.08 10:47

無題 - ruiros2019

このコメントをいれた後の夕方、駅前に家族と夕食をかねて出掛けたついでにCD屋をのぞいたら、20世紀の巨匠シリーズとしてクーベリックのマーラー6番が思いがけずあったので、再度の購入に踏み切りました。
1,200円だし、ジャケットは懐かしいクリムトだし。
再リマスタリングされて記載されていなくともまぎれもなくイメージプロセシング化された満足のゆく音でした。
過去にアルヒーフのヨーロッパのリュート音楽というCDも同様であったのでふん切れました。
2007.09.08 Sat 23:19 [ Edit ]

Re:ruiros2019さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメント、ありがとうございます。

ご自宅の近くのCD屋にクーベリックがあるのはいいですね。拙宅の近所にはCD屋すらありませんし、ちょっと足を伸ばしても、クラシックコーナーは猫の額なので寄る気になりません…。

20世紀の巨匠シリーズはラインナップが魅力的です。8番はこのシリーズで購入しました。廉価盤なのにジャケットがオリジナルなのがいいです。クリムトの絵は、なにを描いているのかいまひとつわかりませんが、ジャケットとしてとても味があります。
6番、いいですかー。
購入リストに入れておきマス。
2007.09.09 10:08

無題 - ruiros2019

ささやかな臨時収入もあって、さっそく3番と10番アダージョ2枚組さらにベートーヴェンの全集を秋葉/石丸で買い付けてしまいまし。さすがに宇野氏はクーベリックはお嫌いのようで各書で無視されてますが、批評の片腕たる福島章恭がマーラー全集、ベートーヴェン全集をきっちり克明に推奨しているのに意外な気持ちがしました。
秋葉/石丸となるとクラシック在庫数がやっぱり豊富であれもこれもと気持ちが動揺してしまうのは禁じ得ません。
2007.09.14 Fri 08:49 [ Edit ]

Re:ruiros2019さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

石丸電気には昔よく行きました。当時は購入額一割の割引券をつけていて、集めるのが楽しみでした。20年以上前ですが。在庫の豊富さは隋一ですね。最近は自宅も職場も離れてしまったのでご無沙汰です。
クーベリックはライブがいいと評判ですが、スタジオ録音はじっくり聴くに値する名演が多いです。マーラーは全部聴いているわけではないので、これからボチボチと。
片腕の福島さんが推奨していましたか。クーベリックのマーラーは、これも昔の話ですが丸山圭介がひたすら推していましたのをよく覚えています。
2007.09.15 20:14
コメントタイトル:
投稿者名:
Mail:
URL:
投稿内容:
Password: ※1
Secret: 管理者にだけ表示を許可する※2
※1 パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。
※2 チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。

TrackBack

この記事へのトラックバック
TrackBackURL
  →
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新コメント
カッチェン、フロマン、ブラームス"ピアノ協奏曲2番" from:Yoshimi
-11/16(Thu) -
フルニエ、フィルクスニー、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-03/18(Sat) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-02/20(Mon) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:“スケルツォ倶楽部”発起人
-02/20(Mon) -
古典四重奏団、ベートーヴェン、15,13"大フーガ" from:老究の散策クラシック限定篇
-10/30(Sun) -
最新TB
カテゴリー