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自省録(5)、アラウ、ザルツブルクの"熱情"

2015.07.15 - ベートーヴェン

ma
 


マルクス・アウレーリウスの言葉は正論だ。それだけに厳しい。
日曜日の夜にひもといたならば、自分の心がたよりなくなる。
ある種、毒である。

「あたかも一万年も生きるかのように行動するな。不可避のものが君の上にかかっている。生きているうちに、許されている間に、善き人たれ」(第4巻17)。









アラウのピアノで、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ23番を聴く。

これはザルツブルク音楽祭でアラウが生涯の最後に行った演奏の模様。
アラウは日本に最後に来た時も、この曲を弾いた。残念ながら実演ではなくFMで聴いた。大学生のときだったと思う。30年以上前のことだが、あまりのスゴさに腰が抜けそうになったことを今でも鮮明に覚えている。そのエアチェックはいまでも大切に保管している。カセット・テープなど、もう聴くかどうかわからないが、なんだか捨てられない。

このライヴは、それに比肩する。東京公演の模様は、なにしろ自分が学生のときに聴いたものだから、いっそう感慨深い。だが、いまこのザルツブルクを聴くと、やはり感銘を受けないわけにいかない。

テクニックは完璧とは言えない。なんたって79歳だから。同じ時期のポリーニなんかと比べたら気の毒なほどである。
ただ、それを補って余りあるなにかが、この演奏には厳然と屹立している。手ごたえ確かに。

ことに、3楽章の終結部の緊張感はただごとではない。ピアノという楽器は、こんなに深くて広がりのある音を出す楽器だったのか。音量そのものは最大とはいえないのに、この威圧感はなんなのだ。

ド迫力である。
アラウの70年以上に渡るピアノ人生は、伊達や酔狂ではない。

カップリングのリスト、とくに「ダンテを読んで」も名演である。が、なにしろベートーヴェンが凄すぎるので、このディスクとしては霞んでしまう。



1982年8月15日、ザルツブルク祝祭大劇場でのライヴ録音。



ma
 
休憩。





重版できました。




「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!







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Comment

アラウの熱情ソナタ - yoshimi

こんにちは。
アラウの熱情ソナタは、スタジオ録音以外にライブ録音のCD・DVDが数種類出ていますが、アラウはライブが本領と言う人もいますね。

orfeo盤は持っていませんが、この年齢に近いライブ録音だと、80歳のバースディ記念リサイタルのDVD持ってます。
熱情(とワルトシュタイン)の演奏は、指回りがやや悪いところはありますが、凝縮した緊迫感があって、アラウならではの渋さがあります。

技巧が安定していた頃のライブだと、1970年のベートーヴェンフェスティバルの演奏が良いように思います。
映像でみると、顔から汗がひたたり落ちる熱気の篭った演奏でした。
https://www.youtube.com/watch?v=Tdg-DT8rTUQ
2015.07.16 Thu 18:53 URL [ Edit ]

聴いちゃいました! - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんにちは。
このザルツブルクの演奏、日本公演と年代が近いので大体予想はついたのですが、やはり強い感銘を受けました。全体を通してとても力強く、生き生きとしている。ゆっくりとしたところより、速い箇所が好みです。なぜだろう。
偉そうにアラウを語っていますが、彼の若い頃の演奏はほとんど知りません。最も古くてもステレオになってから。いや、60年代のベートーヴェンもろくに聴いていません。
まだまだ遊びが足りません。
1970年の演奏、ご紹介ありがとうございます。きっといいピアノなのでしょう。週末が益々楽しみになってきました!
2015.07.16 21:07
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