ベートーヴェン 交響曲5,6 マゼール指揮ベルリン・フィル佐藤優の「功利主義者の読書術」を読む。
本を選ぶときは、パラパラと目次を眺めて興味のある項をおもむろに開き、その箇所が気に入れば手に取る。家に帰って全部読みとおしたあげく印象に残るのは、結局最初に目にとめた部分であることが多い。
本を手に取ってから1分以内で勝負が決まる、といったらおおげさだけど、どうもそのあたりは直感で決まるようだ。これも縁なのだろう。
さて、この本を購入したのは以下の記述が気になったからである。亀山郁夫訳の「カラマーゾフの兄弟」について書いた箇所。
「たいへんな勇気が必要となる仕事だ。ロシアにかかわる学者、新聞記者、外交官たちには一癖も二癖もある奴が多い。苦労して新訳を出しても『ここの解釈が間違っている』とか『先行訳の焼き直しに過ぎない』といった類のやきもち半分の悪口を言う輩が必ず出てくる。悪口も耳に入ってこなければ気にならないのであるが、ロシア屋さんの世界は狭いので必ず聞こえてくる。他人の訳に文句があるならば、対案で自分の翻訳を提示すればいいのに、それはしない。それだけの語学力がないからできないのだ」
全体を通して、結局この箇所に最も強い印象を受けた。
「カラマーゾフ」を学生時代に原卓也による新潮文庫で読んだが、内容はおおかた忘れ去ってしまった。
亀山訳、根性を入れて読んでみようかな。
エロクァンス・オーストラリア。今一番気になる廉価盤ブランドだ。いまでもじゅうぶんなラインナップだと思うが、まだまだ次が出てくる勢い。録音のあることは知っていたけれど今まで聴く機会がなかった演奏がじつに手軽に手に入る。ありがたいものだ。
このマゼールのベートーヴェンもそう。ベルリンとのLPが高価で出回っていて、聴きたいけれどそこまでするかということもあり、今まで聴いたことがなかった。
ウイーンとの東京ライヴはけっこう好きな演奏なので、ベルリン盤もいいのだろうと思っていた。期待通り。
鋭角的でありながら余裕の感じられる演奏。弦も木管も金管も実に雄弁でありつつ、合奏は流れよくまとまっている。
ベルリンの溢れんばかりのパワーを手際良くまとめる手腕が28歳の若者のものであるとは。いまさら驚くことではないか。
細かい味付けも豊富。音の強弱やテンポの細かな揺れがあったり、普段はよく聴きとることのできない副声部が顔を出したり、面白いスパイスになっている。それらはあざといわけではなく、自然に流れに溶け込んでいる。
また、2楽章のなかで弱音でそうっと折り重なっていく弦は絶妙。素晴らしくみずみずしい感性であると思う。
1958年の録音。
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