ソロモン/ベートーヴェン「後期ピアノソナタ集」ベートーヴェンの27番のソナタは1814年に作曲された。作品番号90。2楽章からなる十数分ほどの小曲であるが、中期の精力絶倫的闊達さと後期の諦念的静けさを併せ持ったような作品である。
終わり方が何気なくていい。気を抜いていると、曲が終わったかどうかもわからない。きれいな空気のように澄み切った音楽である。
ソロモンは1902年に生まれたイギリスのピアニスト。病気によって50代半ばで引退した。右腕の障害とも脳梗塞とも言われている。
このピアニストの存在を、例によって吉田秀和の著作によって知った。
『世界のピアニスト』の中で取り上げられていて、ベートーヴェンの「月光」、「悲愴」、「告別」ソナタ、さらに3番の協奏曲を聴き、「今世紀は幾人かのベートーヴェンの名手を持ったが、ソロモンは、その中でも最高級、最上級にしか数えようのないピアニストである」と絶賛している。
まあ、そう書かれていたから大変興味をもったわけで、いつだったかEMIのREFERENCESシリーズに後期ソナタ集が出ていたので購入した次第。
1951年から1956年にかけて録音されており、モノラルであるが聴きやすく、特に27番は鮮明である。
ソロモンのピアノはがっしりと堅牢。ひとつひとつの音が粒だっていて澄んでいるから聴きやすい。
テンポをくずしたり強弱をつけたりの変化はあまり多くなく、どこを叩いても「ベートーヴェン」という演奏である。
浮き足立ったところがない落ち着いた大人の音楽であると言える。常に浮き足立っている私には見習うべきところ満載である。無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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