カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ロスアンジェルス・フィルホテルの部屋から見えた電車。
長野電鉄屋代線だということは、あとで調べてわかった。
夏休みも最終日になってしもうた。楽しかった旅行に思いを馳せる。
「アメリカのジュリーニ」6枚組、第2弾。
ジュリーニがロスフィルを振ってDGに録音した演奏はどれも名演といっていいものだと思うが、この第5はとくにすばらしい。
こんなになめらかで、かつ緊張感のある冒頭はそうそうあるものではないだろう。最初の5秒を聴いただけで勝負あった感じ。
ジュリーニの必殺レガートは全曲に渡って随所に聴くことができるが、ある種の殺気めいたものを感じる。タイミングと按配が絶妙である。だからこの演奏の聴きどころは全部ということになるが、あえて特筆するとしたら、最終楽章になる。
やや遅めのテンポで進む音楽は、ややギクシャクしているようなところがある。それはジュリーニが流れよりも音の空間を重視しているからじゃないかと思う。ひとつひとつの音を神経質なまでにひきたたせてハーモニーのバランスをとってゆくところの根気は壮絶である。
1楽章に続いてここでも反復を実行しているが、転調をするところの緊迫感は上質なミステリーのどんでん返しのようで、思わず尻がすっぱくなる。
ピッコロの扱いは実に丁寧、ひとつも漏らさないよう細心の注意を払っており、とても効果的だ。
この演奏を十数年ぶりに聴いてみたけど、いままで聴いた多くの第5のなかでもトップクラスの演奏じゃないかと思う。
1981年11月、ロス・アンジェルス、ロイス・ホールでの録音。
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