忍者ブログ

グールドのベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第32番」

2007.10.07 - ベートーヴェン

gould

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第30~32番 グールド(Pf)



今日は10月の第1日曜なので、スカパーの「クラシカ・ジャパン」が無料で視聴できる日なのだ。
夕方にバーンスタインの「大地の歌」を観る。イスラエル・フィル、ルートヴィヒ、コロというメンバーは録音と同じものだが、こちらは観客の入ったライヴ。冒頭のオケの鳴りは、CDと同じであまりパッとしないが、だんだんと良くなっていく。終楽章のハープ、チェロのピチカートはよく鳴っていて逆にハッとさせられる。
歌ものは映像付きがいい。バーンスタインの指揮姿も魅力だが、両歌手の表情がわかるのは情報量として大きいし、歌だと思わず感情移入してしまうのだ。


グールドの後期のベートーヴェンは、彼が23歳のときに録音されて以来、とうとう再録をすることはなかったけれど、モノラルとはいえ演奏は最高だ。
32番というと、ものものしく気合の入った演奏が多い。もちろんそうしたピアノも悪くないし、作曲年代や最後のソナタという背景を考えると、それが王道なのかも知れない。
その一方で、まるで鼻歌を歌うかのように弾くやりかたもある。グルダやグールドがそう。
音は軽めでテンポは速い。いかにも思い入れがなさそうなピアノなのだが、聴いていくと軽い味の中にしみじみとベートーヴェンが見えてくるような気がする。
この曲は、冒頭の荘重な響きがいかにも堅苦しいベートーヴェンの面目躍如といった音楽となっているが、むしろ難しいのは第2楽章のきかせかたじゃないだろうか。ジャズを思わせるパッセージがあるかと思えば、「田園」の終楽章のように思わず家に帰りたくなるような場面もある。まったく多彩な楽章だが、ここをグールドは割りに軽く流していく。この流し方がなんとも絶妙で、この音楽の難しさを感じないのである。軽いけれども、味がいい。
たぶん、各場面のテンポや音量は周到に計算され尽くしているのだ。
これが23歳のときの演奏なのだろうか、なんていう驚きは、グールドの場合ない。
PR
   Comment(3)   TrackBack()    ▲ENTRY-TOP

Comment

無題 - sweetbrier

こんばんは。グールドのベートーヴェン後期ソナタ、吉田さんのレビューにあつらえられたようなCDジャケットが素敵ですね(?本末転倒かな)。
しばらく遠ざかっていたシリーズですが、またグールドやらリヒテルを出してきて聴こうかなと…そんな気分になりました。

話が逸れて申し訳ないのですが、グルダが演奏する32番は、ウェブで検索したら異なる録音が2つありました。2つの録音にどこか決定的な違いがあるのかしら、と、思い出す度に気になっています。
2007.10.07 Sun 21:07 URL [ Edit ]

Re:sweetbrierさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
このジャケット、カッコイイですね。私の聴いているものと違うのですが。最近発売された紙ジャケットのようです。ジャケ買いしてもおかしくないですね。
32番の中で、私的にはグールドの演奏はベスト3に入ります。あとのふたつははっきりしませんが(笑)。

グルダの32はアマデオとロンドンではないかと思います。ロンドンのは29は聴きましたが32はまだです。アマデオよりも若い頃のものではないでしょうか。
ちなみにアマデオの演奏はとても良いです。快速テンポの中に、普段着のベートーヴェンがいるかのようです。
2007.10.07 21:32

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます。
スカパーが無料で見られる日があるんですね~
バーンスタインの「大地の歌」映像で見れば、また印象が違うでしょうね~。

吉田さんの記事で、ベトベンの32番のソナタ、ミケランジェリの演奏の素晴らしさを再確認したんですが、グールドの演奏、まったく想像もつきません。聴いたことがありません。そういえば、グールドの演奏、ほとんど聴いていないような~
聴きたい演奏は多いですが、人生は短いような感じがしています~。

ミ(`w´彡)

2007.10.08 Mon 08:05 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

カミさんが韓流を観るためにスカパー契約しているのですが、ほぼ毎日韓流で閉口しています…。
「クラシカ・ジャパン」は面白い番組が多いですが、契約してしまうととても全部観きれないので、月1で楽しんでいます。バーンスタインの指揮姿は華があるのでみていて飽きませんねえ。

ミケランジェリのCDはたしか持っていたので、じっくり聴いてみます。グールドのは、それほど変わったことをしたものではなく、剛球ストレートな演奏です。あっさり味で気に入っています。

>聴きたい演奏は多いですが、人生は短いような感じがしています~。
同感です。仕事している場合ではないですね(笑)。
2007.10.08 10:48

無題 - bitoku

吉田さん、こんばんは。

出ましたねグールドのベートーヴェン後期ソナタ。
オリジナルジャケットのデザインは格好良いですね。

>まったく多彩な楽章だが、ここをグールドは割りに軽く流していく。この流し方がなんとも絶妙で、この音楽の難しさを感じないのである。軽いけれども、味がいい。

おしゃっる通り”重さ”より”軽やかさ”を感じる演奏ですが、流石はグールドと思わせる一見薄味なんですが、実は深い味わいがあります。
しかし、なんて個性的で自由な演奏なんでしょう。王道路線のベートーヴェンも好きですが、これもひとつの解釈として納得させられてしまう名演です。

夜、寝る時に良く聴いていましたが、ゴールドベルクもそうだけど聴きほれてしまって眠れない1枚ですね。(笑)

2007.10.08 Mon 21:48 URL [ Edit ]

Re:bitokuさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

このグールドのベートーヴェンは、けっこう前から愛聴している演奏です。bitokuさんと同様、一時期は寝るときに毎晩聴いていました。今思えば、何を思ってこんな重い選曲をしていたのか…。
このジャケットはカッコいいですよね。
買いなおそうかとも思わせる良さがあります。
それにしても、32番にあるまじきこの軽い演奏。32番の概念を覆されます。とはいえ、これも55年の録音だから、まあ古いものなのですが、世間一般には主流はバックハウス系といえましょうか。バックハウスもいいのですけどね。
30、31と並べて聴くと、グールドのベートーヴェンに対する考え、愛情が少しわかるような気がします。
軽いとはいえど「これがベートーヴェン」、そんな手ごたえを感じる演奏であります。
2007.10.08 22:02
コメントタイトル:
投稿者名:
Mail:
URL:
投稿内容:
Password: ※1
Secret: 管理者にだけ表示を許可する※2
※1 パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。
※2 チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。

TrackBack

この記事へのトラックバック
TrackBackURL
  →
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新コメント
カッチェン、フロマン、ブラームス"ピアノ協奏曲2番" from:Yoshimi
-11/16(Thu) -
フルニエ、フィルクスニー、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-03/18(Sat) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-02/20(Mon) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:“スケルツォ倶楽部”発起人
-02/20(Mon) -
古典四重奏団、ベートーヴェン、15,13"大フーガ" from:老究の散策クラシック限定篇
-10/30(Sun) -
最新TB
カテゴリー