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グード、ベートーヴェン、"31番"

2017.08.31 - ベートーヴェン

bizet



リチャード・グードのピアノで、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ31番を再び聴きました(1986年8月、1988年7月、ニューヨーク、RCAスタジオでの録音)。


記録によれば、ベートーヴェンがこのソナタを完成したのは、1821年の12月25日。彼は、このソナタを誰にも献呈しませんでした。
ウィルヘルム・ケンプは、「このソナタで私たちは、もっとも個人的な告白に出会う。だからベートーヴェンがこの曲を誰にも献呈せずに手許に置きたく思っていたのは何ら不思議ではない」と言っています。
ベートーヴェンの心境をわかる術はありませんが、ケンプが言うなら、そうなのでしょう。

曲は3楽章からなりますが、第2楽章が短いのに対して終楽章がアダージョとフーガとに分かれていることから、4楽章制ともとれます。でもはっきりとした区切りは見当たらないので、全体を通してひとつの曲と考えてもよいように思います。

グードのピアノは、たっぷりとしたテンポでもって重心を低くして、表情を微妙に揺らせながらも、ひとつひとつの音を丁寧に紡ぎ上げたもの。流れのよさとかスピード感といったものは希薄だけれども、堅実な弾きぶりに誠実さを感じます。













ma
 
パースのビッグムーン。












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Comment

ブレンターノ・ソナタ - yoshimi

こんばんは。

第31番は、当初はアントニア・ブレンターノ夫人へ献呈するつもりだったようですね。
ロマン・ロランは、献呈の意図から第30番~第32番を「ブレンターノ・ソナタ」と呼んでいたそうです。

現在の研究では《不滅の恋人》=ブレンターノ夫人という説が有力です。
青木やよひさんの『ベートーヴェン《不滅の恋人》の探求』の巻末解説(夫の北沢方邦氏による)では、第31番は「《不滅の恋人》との愛の挫折に由来する心の痛手と苦悩をうたっている」という解釈です。

音楽的にも、全32曲中第31番が最も叙情的なソナタだと思いますし、《不滅の恋人》との思い出を回想したドラマみたいな楽章構成です。
ということで、ケンプの言葉は核心をついているのではないかと思います。
2017.09.03 Sun 22:37 URL [ Edit ]

そうでしたか。 - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんばんは。

とても素敵なお話です。
ベートーヴェンはモテなかったとみんな言いますが、そこは間違いないようで。。
そのあたりがまた、男としては共感できる部分でありまして。
31番、聴きたくなりました。
2017.09.04 20:13
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