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てがみ、マゼール、"田園"

2011.12.24 - ベートーヴェン
 
maa

ベートーヴェン「田園」 マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団



チェーホフ(鈴木三重吉訳)の「てがみ」を読む。
9歳のユウコフは故郷のマカリッチのだんなに手紙を綴る。
母親をなくし天涯孤独の身になったユウコフは、奉公のため靴屋に入れられる。靴屋は暴力をふるうし食事もまともに与えてくれないから逃げ出したかったが、靴のないユウコフには無理な話だ。
「だんなさま、どうぞ、わたしをひきとりにきてください。キリストさまのおんなにかけて、きつときつときてください」。
この話の行方は読者に委ねられるわけだが、舞台がクリスマスの夜というところがミソ。ユウコフ少年はきっと救われる、と読んだ。



マゼールとクリーヴランドの「田園」は全体を通して聴くと、いくぶんムラのある演奏だ。
1楽章は19世紀初頭のドイツ森のささやきを弦楽のうねりに感じたいところなのに、響きがくぐもっているので、森というよりは昭和の東京の光化学スモッグのような味わいだ。
4楽章はもっと激しい、メリハリの強いやり方を期待したが、わりとおとなしい。はるか太平洋沖に大きくそれていった台風のようだ。
それに対して、ゆっくりとした楽章は気に入った、というより相当な演奏だと思う。
2楽章の端正な佇まいはすばらしい。浮世とは隔絶した形而上的な何かが、ゆらゆらと漂っているようだ。ことにクラリネットのソロは、孤高なまでの美しさ。
終楽章は、途中まではとくに目立って良いところを見いだせなかったが、ラストのためいきのような弦楽のメロディーにやられた。「田園」で久々の感動。


1977,78年、クリーヴランドでの録音
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Comment

無題 - Yuniko

こんばんは。
前項の「英雄」で、父がマゼールのベートーヴェンを買っていたという話を書きましたが、その第1号がこの「田園」でした。第1主題を奏でるオーボエ二重奏の美しい響きに魅了されました。
ただ、ファンの方には悪いのですが、「田園」は今一つ好きになれない曲のままです。世評に高いワルターやベーム、バーンスタイン、カラヤン&ベルリンpo各種なども聴いているのですが、そうした印象は変わりません。結局、私の「田園」の一番お気に入りはなぜか、フルトヴェングラー&ウィーンpoの幽霊が出てきそうなおどろおどろしい演奏です。

>1楽章は19世紀初頭のドイツ森のささやきを弦楽のうねりに感じたいところなのに、響きがくぐもっているので
昨年大晦日のマゼール指揮ベートーヴェン全交響曲連続演奏会では、「田園」が「運命」の前プロで演奏されました。けっこう大編成で演奏されていたのに、なぜかオーケストラの鳴りが悪く、まさにくぐもった響きでした。CD同様に「嵐」もあっさり。でもゆったりした楽章の木管がとても美しかったのも同じ(これは全9曲通じてそうでした)。第5楽章終盤で、途端に晴れ間が広がったようにオケの響きが明るくなったのも同じ。となると、これはマゼールの「計算通り」なのかもしれませんね。
全交響曲連続演奏会では、曲ごとにオケの編成を変えていましたが、大編成にもかかわらず鳴りが悪かったのが、「英雄」「運命」「田園」「第9」。逆に輝かしく鳴り渡っていたのが「第2」「第7」。演奏の印象が強烈だったのが、鳴りが悪かったはずの「英雄」「運命」、そして「第7」(これは超絶の名演奏)。鳴りが悪かったのは全部♭系の曲。鳴りがよかったのは♯系の曲。しかし、鳴りが悪かった曲が印象が薄いかというと、そうではないところがおもしろいです。
宇野功芳氏が著作で「ベートーヴェンはオーケストレーションがうまくない」と書いていたし、昔読んだ音楽雑誌でN響の(たしか)千葉馨氏も同様のことを言っていましたが、「当たってるかも」と思いました。また、これも昔聴いた古楽系オケ演奏会のプログラムに「調性の違いによって、曲想・オケの響きはまったく違っており、レコード録音ではこれは伝わらない。分かるのは古楽系オケの生演奏だけ」と書かれていましたが、これも「前半は当たっているかも」と思いました。
2011.12.25 Sun 23:16 [ Edit ]

Re:Yunikoさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

「田園」はベートーヴェンの交響曲のなかでは、いささか異色じゃないかと思います。吉田秀和も、あまり好きではないというようなことを言っていました。
コンサートの演目としては、ちょっと微妙な立ち位置ですね。ラストを締めくくるには穏やかすぎるような気もするし、前半では重いような。
CDでいえば、これはもう星の数ほど出ているので聴き切れるわけはありませんが、なかではカラヤンとBPOのがわりと好きです。速いテンポのなかで、終楽章はグッと感動させられるものがあるかなあと。
このマゼール盤も、最後はキマした。それまでは2楽章以外はまあ普通かなあと思いつつ油断して聴いていました。
これが計算だとしたら、大変なものじゃないかと思います。

昨年の大みそか、聴きに行かれたのですね。
すごく興味はあったものの、体力的に自信がなく断念しました。ネットでは、ほんのちょっとだけ聴きました。
♭系の曲と♯系の曲では、、鳴りが違うのですね。指揮者とかオーケストラとの相性もあるのですかねえ。
大みそかは行けませんでしたが、概要はわかりました。ありがとうございます。
マゼール箱を聴きつつ、思いを馳せることにします。
2011.12.27 22:21
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