プッチーニ オペラ集黒田恭一氏が亡くなったことを新聞の朝刊で知った。
クラシックを聴き始めた頃に、「レコード芸術」や「週刊FM」の記事をよく拝見したものだ。
よく覚えているのは、「といえなくもない」を多用する独特の語り口。
若い頃は、曖昧で煮え切らない文章にイライラすることが多かったが、今思えば曖昧でもいいじゃないかという気もする。ことに音楽評論においてはなんでもかんでも断定すればいいわけではないわけだ。
ここ最近は文章よりもテレビやFMで見かけることが多かったが、もうあの解説を聞けなくなるとは残念である。
プッチーニ・ボックスから、国辱オペラの誉れ高い「蝶々夫人」を聴く。
このボックスにマゼールの占める割合はとても高いけれども、内容もいい。オケに並んで歌手もレベルがそろっているため、全体的に高いところで安定している。
この演奏ではことにドミンゴが素晴らしいと思う。澄みきった輝かしい声を存分に発揮しており、時には音が割れんばかりに響き渡る。70年代のドミンゴはいいものだ。声の艶が違う。
それから、このシリーズの常連であるスコットも好調。歌いぶりに余裕を感じる。大オーケストラにかき消されることのない声量に加えて、表情も豊かだ。
オケは冒頭からよく鳴っている。マゼールによる鋭角的で彫が深いドライブが利いているうえに、フィルハーモニア管弦楽団の音色が輝かしい。
マゼールによるプッチーニの録音は意外(?)に多い。このボックスの中では12曲中7曲を担当しているし、他にも思いつくだけで「トスカ」、「蝶々夫人」、「トゥーランドット」を入れている。
彼はレパートリーも録音も多いからプッチーニ指揮者という呼称は当てはまらないかもしれないが、プッチーニを振らせたら最も安定感のある指揮者と言えるだろう。
レナータ・スコット
プラシド・ドミンゴ
ジリアン・ナイト
イングヴァール・ヴィクセル
フロリンド・アンドレオッリ
ロリン・マゼール指揮
フィルハーモニア管弦楽団
1978年、ロンドン、オール・セインツ教会での録音
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