プッチーニ オペラ集佐伯清監督の「昭和残侠伝 破れ傘」を観る。
本作は昭和残侠伝シリーズの9作目、最終作である。1972年の作品。
初期のものは、高倉健がべらんめえ調でしゃべり倒しているところが魅力であったが、ここでは比較的無口で重厚な演技になっている。このあたりから「寡黙」なイメージを作っていったようである。
抗争する組を仲介しようとする鶴田浩二が渋い、渋すぎる。理想の上司像といえよう。
それに対し、組同士を抗争に巻き込もうとする山本麟一の悪役ぶりもスゴい。100%混じりけなし、竹を割ったようなワルぶりである。半端がなくて気持ちがいい。
ストリーはいつも通り。
我慢して、我慢して、我慢して、爆発だ。
温泉に浸かって歌を口ずさむ北島三郎を、高倉健が「おめえは歌だけはうめえな」とか言って湯船に沈めるシーンは今は昔であるな。
昨年に購入したプッチーニのオペラ集をちょっとずつ聴いている。
今回は、ショルティの「ボエーム」。
このオペラについては、セラフィンとカラヤンの評判が圧倒的によくて、その影に隠れたようなショルティ盤についての前評判は知らなかった。
レコ芸の「名盤300選」ではどのくらいの評価なのだろう。
オペラを得意とするショルティのことだから、そこそこいいものじゃないかと聴く前に軽く思っていたが、やはり、よいものだ。予想以上によかった。
特にオーケストラがいい。実に雄弁である。
華やかで重厚な金管楽器。なめらかでしっとりとした手触りの弦楽器。緻密な木管楽器。
金属の襞を一本ずつ感じるシンバル。
鳴らせるところはバリバリ響き渡るが、静かな場面ではしっとりとした抒情を醸し出している。
なにげなく取り出して聴き始めたときは、イタリアのオーケストラによるものだと思った。冒頭などはカラッと明るいし、泣かせどころはベタっと湿っていたからだ。
実際にはロンドン・フィルなわけだけど、とてもいいのだ、このオケが。今もいいオーケストラだと思うけど、CDなどで聴く限り、特に70年代にいいものが多いようだ。技量は申し分ないし、音楽に合わせて変化するところがじつに巧妙である。
歌手ではカバリエの細く長く伸びる声がいい。ガラス細工のような繊細さを感じる。
テバルディのような可愛らしさはないものの、ここでのミミは、聡明でしっかりとした女性だ。
ただ、ヴィジュアルを想像してはいけない。ひたすら音に集中。
モンセラ・カバリエ(ミミ)
プラシド・ドミンゴ(ロドルフォ)
ルッジェーロ・ライモンディ(コリーネ)
シェリル・ミルンズ(マルチェッロ)
ジュディス・ブレゲン(ムゼッタ)
ゲオルグ・ショルティ指揮
ロンドン・フィル
ジョン・オールディズ合唱団
ワンズワース校少年合唱団
1973年7月、ロンドン、ウォルサムストウ・タウン・ホールでの録音。
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