ムラヴィンスキーとレニングラード・フィル 日本公演堀紘一の「人と違うことをやれ!」を読む。
ソニーとホンダの社員と、日立と日産の社員とのどちらをとるか。著者は「個人的なデータが少ないようなら、迷わず私は、ソニーとホンダの人間を選ぶだろう。そのほうが会社に役立つ気がするからである」と言う。
「日産や日立のように、何事も上からの命令、あるいは合議制で決めたものだけに従わせるような会社にいれば、社員は何も考えなくなる」からだと言うが、ホントウかな。
会社単位で考えれば、そういった個性の違いはあるかもしれない。確かに、会社によって社員の傾向が似ているということは多少はあるかもしれないけれど、それは会社にいるからであって、一歩出てしまえばそれぞれまったく違う人間であろう。だから人を会社では選ぶことはちょっと乱暴であるように思える。
もっとも、自動車会社と銀行員では、だいぶ違うかもしれないけれど。
この演奏は、1979年6月8日のライヴ録音。ムラヴィンスキー最後の日本公演の記録であるとのこと。
当時、私はクラシック音楽を聴いていたし、レニングラード・フィルが来ることも知っていたけど、行くことはできなかった。外国のオーケストラを生で聴いたのは、その後高校に入ってバイトを始めてからだった。
当時は「まあしょうがないや」と軽く思っていたが、今思うと残念で仕方がない。このCDの演奏を聴くと、つくづく思う。
女房を質に入れてでも行くべきであった(いないって)。
ムラヴィンスキーが日本公演で最後の最後に演奏したのは「フランチェスカ・ダ・リミニ」だが、録音が残っていないので、「眠りの森の美女」が現存する最後の記録となるらしい。
全曲からの抜粋で、「序奏」、「アダージォ」(1幕より)、「パノラマ」(2幕より)、「ワルツ」(1幕より)の4曲が演奏されている。
「序奏」は、冒頭からアイドリングなしでパワーが炸裂する。暴力的とも言える速さ、寄れば真っ二つにされそうな切れ味、全体に漂う緊迫感が尋常ではない。曲を知らなかったら、とてもバレエ音楽とは思わないだろう。この曲をこんなに激しく演奏する人間が他にいるのだろうか。
「アダージォ」はハープの妙技を堪能できる。音質はデッドながら、まったく危なげのない完璧な技をハープで味わうことができる。音質が硬いのにも関わらず、この技術の高さはスゴイ。
「パノラマ」は、「序奏」とは対照的に穏やかだ。青空の下、凪いだ海のような幸福感に満ちている。ゆっくり目のテンポで暖かくメロディーを奏でる弦と、一糸乱れない木管楽器の合奏は、完璧すぎてシュールだ。
「ワルツ」は匂い立つような気品がある。夢のように柔らかいレニングラードの弦がきいている。
要所でメリハリのついた強弱と間の按配がなんとも絶妙。
濃厚な20分である。
この曲を聴くならなんといっても全曲だが、このテンションで2時間やられたら聴く方もかなり大変だろう。
でも、聴きたかった。
1979年6月8日、NHKホールでの録音。
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