カッチェンのピアノで、ブラームスの小品集Op.119を聴く(1962年~1965年、ロンドン、デッカ第3スタジオでの録音)。
ブラームスが最後に書いた一連のピアノ小品集、作品117から119はまるで三つ子のよう。
夜の帳が下りた後、静まった深夜の都会に、深いため息のような輝きを放つ。
この119は、彼が最後に書いたピアノ作品と言われている。
カッチェンのピアノは、自然なアゴーギクを用いつつ、ロマンティックな雰囲気を惜しみなく醸し出している。
1曲目は間奏曲、アダージョ。点描画のような響きはあたかも、澄み切った冬の星。
2曲目は間奏曲、アンダンティーノ。いらだち、あせり、憤り、つかの間の休息、生きる手応え。
3曲目は間奏曲、グラツィオーソ。期待とほんの少しの不安に、ざわざわする気持ち。
4曲目はラプソディー、アレグロ。勇ましく、気高い。怖いものはない。中間部は、サロン音楽のように甘く煌びやか。
春。
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