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ポリーニとアバドのバルトーク「ピアノ協奏曲第2番」

2008.06.01 - バルトーク


bartok

バルトーク ピアノ協奏曲第1,2番 ポリーニ(Pf) アバド指揮シカゴ交響楽団


マーチン・スコセッシ監督の「ディパーデッド」を観る。
マフィアと警察の、ふたりのスパイの話。スコセッシらしい男くさい映画。
ディカプリオ、デイモン、ニコルソンの看板3俳優が、それぞれ持ち味を出していて、みせてくれる。
州警察の上層部たちもいい味を出している。
出来すぎた話ではあるけれども、役者のうまさと演出の堅さで最後まで飽きさせない。
2時間半の長尺があっという間に駆け抜ける。
名作「グッド・フェローズ」に比肩する作品である。


ポリーニのバルトーク。
一時期、「マン・マシーン・インターフェース」と呼ばれたこともあるポリーニの、超絶技巧を惜しみなく放っていた、70年代後期の録音である。

少し前のことだが、彼のバルトークを聴くチャンスがあった。「ブーレーズ・フェスティバル」である。
この日、サントリーホールでブーレーズの指揮するロンドン交響楽団の伴奏で、この2番を演奏する予定であった。とても楽しみにしていたのだ。
ところが、当日になって、バルトークの協奏曲はキャンセルになった。代わりにシェーンベルクの独奏曲を演奏することになったのだ。
これにはがっかりだった。
いっそのこと、演奏会を中止して、払い戻ししてくれたほうがよかったとすら思ったものだ。
これは、象徴的な出来事だったのかも知れない。
このときすでに、彼にはバルトークを弾ききる力はなかったのじゃないだろうか。
事実、90年代以降の彼の録音には、一時期の超絶的機械的技巧は影を潜めている。技巧で勝負しなくなった彼は、どこへ行こうとしているのだろうか。

彼の華である70年代、このバルトークは、その絶頂期の最後期にものにあたる。
切れ味、透明感、迫力、そしてハッタリがぞんぶんに効いていて、技巧がストレートに冴え渡っている。
ピアノは打楽器なのだということを、おもい知らせてくれる曲と演奏なのだ。
バケツの底のようなシカゴ饗のティンパニが、精密な演奏のなかに野趣を添えている。

1977年、シカゴでの録音。
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Comment

無題 - bitoku

吉田さん、こんばんは。

ポリーニのこの盤は聴いたことがありません。
1977年録音なら彼の絶頂期ですね。

「ブーレーズ・フェスティバル」は残念でしたね。
確かポリーニとブーレーズの競演がNHKのBSで放送されていた記憶がありますが、演奏曲目など思い出せないです。

この2人はなかなかベスト・パートナーになりそうな気がしますが。。。

>90年代以降の彼の録音には、一時期の超絶的機械的技巧は影を潜めている。技巧で勝負しなくなった彼は、どこへ行こうとしているのだろうか。

私も正直ポリーニの90年代以降の録音は面白くないと思っているので吉田さんと意見が近い。(のかな?)

超絶技巧を維持するのが大変な事に加えて、精神的にも一種の”迷い”があるような気がしています。

歳を取っていぶし銀のような演奏をしてもらいたいものです。

でもブーレーズもポリーニも”いぶし銀”ってキャラじゃないから辛いですね。

まるで60年代の学生運動の闘志のようにトゲトゲしく燃えたぎっていた頃の2人の演奏を聴いていると悲しいかな、その頃が2人のピークだったような気がします。
2008.06.01 Sun 22:53 URL [ Edit ]

Re:bitokuさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

ポリーニが技巧を凝らした協奏曲の、これは最右翼に位置する名録音だと思います。
この頃までのポリーニは、実に魅力的でした。

「ブーレーズ・フェスティバル」は残念でした。
シェーンベルクの小品も悪くないですが、ブーレーズとのバルトーク2番と比べたら、そうとう価値が下がります。

解釈でふたりが喧嘩したといううわさもありました。
ほんとうかどうかわかりませんが。。

90年代以降のポリーニはつまらないと思います。いままでのスタイルが強烈すぎて、ぼんやりとした感じが否めません。勝手な思いではありますが、彼には、もうしばらく技巧で勝負してほしかったと思います。

仰るとおり、”迷い”があるのかもしれませんね。

>でもブーレーズもポリーニも”いぶし銀”ってキャラじゃないから辛いですね。

ああいったスタイルのピアニストがうまく老成するのは難しいのでしょうかね。
2008.06.02 21:50

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます

いつも色々な映画を観られていますね
出かけるのが億劫になっています。先週、芝居を観に行きましたが、人が多くて〜;;

ポリーニ 最近はどうなっているのでしょうね
一度、ミケランジェリに教えてもらうために、演奏活動を止めたことがありましたね。その後の、演奏はかなり先鋭的なところがあったように思いますね〜。

それはアバドにも当てはまるのかもしれませんが〜、ベルリンの指揮者になった当時は、面白かったのですが、何か、大人しくなってしまったような気もしますね〜。

シカゴのティンパニ きっと凄いでしょうね〜
いつものように、未聴のままでのコメントです〜。

ミ(`w´)彡
2008.06.02 Mon 05:19 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

「ディパーデッド」、面白い映画でした。スコセッシは「タクシー・ドライバー」以来、贔屓にしている映画作家のひとりです。
映画館で見たのではなく、家でごろごろしながらDVDです。

ポリーニ、たまに録音していますね。
昔と同じようにもったいぶっています。けれど最近の録音は、どうも??です。

80年代前半までの演奏には技術に徹する迫力がありましたが、最近はそれが薄くなり、全体にボンヤリした印象です。
ベートーヴェンの全集を目指しているようですが、このままではゼルキンやグルダに遠く及ばないでしょう。
彼がどこに行こうとしているのか、ちょっと興味深いところです。
2008.06.02 21:56

はじめまして - Lux

はじめまして。最近のポリーニさん、笑うと歯茎がやせ細ってるのが良く見えます。関係ないですが、僕はこれと彼のテクニックとを重ねて見てしまうのです。本当に関係ないでしょうが(笑)。
2008.06.03 Tue 02:40 [ Edit ]

Re:Luxさん、はじめまして。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

>最近のポリーニさん、笑うと歯茎がやせ細ってるのが良く見えます。

体調が万全には見えません。ちょっと痛々しい感じがしますね。
この年代、アシュケナージ、バレンボイム、エッシェンバッハあたりは指揮者に専任していますし、アルゲリッチはソロはやらないということで、徐々にリタイア組が増えているようです。
そのなかでポリーニはソロをがんばっています。可能であれば70年代の華、違った形でまた咲かせて欲しいものです。
2008.06.03 21:09

無題 - yokochan

こんばんは。ご無沙汰してます。
このバルトークは、私も愛聴盤です。
ピアノ・指揮・オケの三者+録音、いずれも切れ味鋭く、まさにポリーニのピアノに唖然としたものです。
一昨年、ルツェルンのソリストとしてのポリーニを聴きましたが、ミスタッチもあり、正直精彩を欠いてました。
まだまだ老けこむには早いですよね。
2008.06.04 Wed 01:01 URL [ Edit ]

Re:yokochanさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

やはり聴いてらっしゃいましたか。これはすごい曲と演奏です。
ポリーニの最盛期(かどうか、今後わかりませんが)の圧倒的な記録です。
アバド/シカゴの絶好調です。

最近の録音ではベートーヴェンを聴きましたが、いまひとつピンとくるものがありませんでした。
ルツェルンはいまひとつでしたか。演奏家として難しい年頃なのでしょうか。
彼の録音ペースは相変わらず遅いですが、今後も注目していきたいと思います。
2008.06.05 12:47

無題 - mozart1889

こんばんは。
これ、思い出の演奏です。クラシック音楽を聴き始めた頃、初めて買った『レコード芸術』、1980年2月号でした。特集「リーダーズ・チョイス」で第1位がこの演奏でした。
「そうか、そんなにスゴイのか」と買ったのですが、なあんも分かりませんでした。???状態で僕は聴いておりました。そりゃそうです、当時、パッヘルベルのカノンやアルビノーニのアダージョ、G線上のアリアなどを喜んで聴いていたんですから・・・・。
バルトークは普段あまり聴かないんですが、この演奏だけはよく聴きます。ポリーニとアバドの掛け値なしの名演と思います。
ピアノを打楽器のように扱って・・・・という面白さに気づいたのは随分後になってからでしたが。
2008.06.05 Thu 03:53 URL [ Edit ]

Re:mozart1889さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

「リーダーズ・チョイス」で第1位でしたか。当時は読んでいたはずなのですが覚えていません。
でも、このコンビの絶好調のころの記録ですから、1位はうなづけます。
私も始めてこの曲を聴いたときは、つまらなかったですね。やけに派手な曲だなと。
このポリーニ盤を何度かきくうちに面白くなってきました。
後年、ポリーニがブーレーズと日本でこの曲をやるというので、期待したのですが、破られました。
生でポリーニのバルトークを聴くことはもうないと思いますので、今後もこのCDを楽しみたいですね。
2008.06.05 12:55

無題 - ニョッキ

吉田さん、こんにちは。

私はコンサートへあまり行っていないので偉そうなことは言えませんが、曲や演奏者の変更は勘弁して欲しいですよね。
その曲が聴きたい、という人もいるし、払い戻ししないのは(日本の)悪しき慣習でしょうか?

ご紹介のバルトークには私も圧倒されて素晴らしいと思いました。

1番のほうですが、TBさせていただきました。

2008.06.07 Sat 12:19 URL [ Edit ]

Re:ニョッキさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

ポリーニのバルトークがキャンセルになったときは、がっかりでした。シェーンベルクの独奏曲ももちろん悪いものではないですが、期待していた「2番」を聴けなかったことは、大変残念でありました。
それでも最後まで聴いたのは、ブーレーズの「春の祭典」があったからなのですが、これも演奏とは言いがたいものでした。
ブーレーズの「ハルサイ」を聴いたという、ネタだけが残りました。

それにしても、このディスクのバルトークは、目覚しい演奏です。他にいくつか2番の演奏を聴きましたが、いまのところ、この演奏に圧倒的な印象があります。
2008.06.07 20:37
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