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"ゆっくりさよならをとなえる"、ブラッセル、"ゴルトベルク変奏曲"

2013.11.10 - バッハ

ma




川上弘美の「ゆっくりさよならをとなえる」を読む。

これは本や食べ物について綴ったエッセイ。本への愛着もさることながら、彼女の食に対するこだわりぶりが面白い。

オクラのおろし和え。「壇流クッキング」を読んだ著者(ワタシもこれ、愛読している)が、ハマる。オクラを小口切りにして大根おろしと混ぜ合わせ、冷蔵庫で寝かせてからおもむろにレモンをかけるという簡単料理。これを彼女は夏の間食べ続ける。

あるときは、突然スパゲッティーナポリタンを食べたくなる。それも、昔の喫茶店で出していたような、ケチャップがベタベタの。それがなかなか探すことができずに難儀する。

冬は生牡蠣。レモンをきゅっと絞り、つるつると口にすべりこませる。あまりのおいしさに10個20個は平気で平らげるが、必ずお腹をこわす。けれど毎年同じことをしている。

彼女の食いしん坊ぶりが如実にあらわれていて、可笑しい。










シルヴァン・ブラッセルのハープでバッハの「ゴルトベルク変奏曲」を聴く。

ハープによる演奏を初めて聴いたが、ほとんど違和感がない。もともとピアノ(チェンバロ)のために書かれた曲だから、ハープで弾くには技術的にも難しいだろうに、ブラッセルは軽々と弾いているように見受けられる。

ハープという楽器は好きだが、お弁当のお新香のように、ちょっとだけ出てくるのが味わい深いものだと思っていた。ベルリオーズの「幻想交響曲」みたいな感じで。
でも、この大曲でずっと聴いていても、飽きない。あたかも鍵盤楽器の一種であるかのような錯覚さえ覚える。なにしろ音がいい。春の淡い夢のような響き。音のよさだけで聴き惚れる。

ブラッセルはリヨン音楽院を卒業後、アンサンブル・アンテルコンタンポランの補助指揮者となり、ブーレーズなどのもとで仕事をしていたそう。現代音楽に関心が強く、ハープのために多くの作品を編曲している。

「ゴルトベルク」をこれだけ見事に弾ききることができるのならば、他にも期待しないわけにいかない。



2007年12月、パリ、聖ピエール教会での録音。










ma

 

合成写真ではありません。
















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Comment

ハープ版ゴルトベルク - yoshimi

こんばんは。
ハープ版のゴルトベルクは、2009年にカトリン・フィンチのCDが出たときに、かなり話題になりました。
ブラッセルの録音は知りませんでしたが、男性のハーピストというのは珍しいような気がします。
2007年の録音なので、フィンチよりも少し前に録音していたのですね。CDがリリースされたのは同じ年らしいですが。

聴き比べると、ハープの音色自体の違いは私にはあまりわからないのですが、タッチや表情付けは大分違います。
フィンチの方が、タッチがシャープで高音の抜けが良く、急速楽章はかなり速く、全体的に表情の変化が強めです。
ブラッセルの方は、まろやかな音でタッチも柔らかく、穏やかな感じがします。こちらの方が夢のような雰囲気が強いかもしれません。
ハープで弾くと、声部が多いと残響が重なって旋律が分離しにくい感じはします。(ハープの奏法を知らないので、残響をどうコントロールするのかわからないのですが)
どちらの演奏でも、ハープの響き自体が私を眠りに誘うらしく、ピアノやチェンバロで聴くより、よく眠れそうです。
2013.11.13 Wed 01:11 URL [ Edit ]

フィンチも面白そうですね。 - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんばんは。

男性のハーピストは、確かに珍しいですね。
今までコンサートで観たハーピストは、全員女性でした。もれなく。
そういうこともあり、ハープという楽器は、女性が弾くものという先入観がありますが、弾くのがとても難しいらしいし、体力もいりそうなので、男性が弾いてもいいのでしょう。
このバッハを聴いている間、とくに性別のことは気にしませんでした。ゆったりとした、いいゴルトベルクだなあと。

ハープの響きは、確かに眠くなりますね。
グールドのピアノやリヒターのチェンバロではとても眠れそうにありませんが、この演奏では、いい夢が見れるような気がします。
ゴルトベルク伯爵(でしたっけ?)に聴かせてあげたいものです。
2013.11.13 21:44
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