チャイコフスキー「交響曲第4番」 マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団志賀直哉の「小僧の神様」を読む。金のない秤屋の小僧に寿司をごちそうするという単純なストーリーに、登場人物のさまざまな思惑が浮かび上がる。感触は、ほろ苦の一歩手前くらい。
いまどきであれば見ず知らずのヒトに奢ってもらうことに憚りはあろうが、それは当時であっても同じような感覚だったのだろうな。
この短編、文学史の金字塔のひとつとされている。いい小説であることは間違いないにしても、それほどとは思えないなあ。
相も変わらず、違いのわからぬ四十男である。
マゼール箱はチャイコフスキーへ。
オケはクリーヴランド管で後期の3つが収録されているが、この4番がもっともすぐれているように思う。
冒頭の金管は厚い響きは、まるでドイツのオケみたい。アンサンブルの精度は終始とても高く、セル時代のものと遜色を感じない。色彩感の豊かさや打楽器の音色のつややかさを考慮すると、むしろこちらのほうが優れているようだ。
チャイコ4番の演奏のなかで、技術の高さではムラヴィンスキー/レニングラード(60年DG)とショルティ/シカゴ(84年デッカ)が双璧だと思っていたけど、このマゼール盤もひけをとらないくらいに目覚ましい。
1981年、クリーヴランド、メイソニック・ホールでの録音。
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