チャイコフスキー「組曲第3~4番」 マゼール指揮ウイーン・フィル、他本田直之の「リバレッジ時間術」を読む。
ビジネス書には、時間管理について書かれているものが少なくない。その中で、朝型がいいと説いているものは半数、いや大半を占めるのじゃないだろうか。そのくらい朝の活動は有益で、効率のよいものだという。
この本も例外じゃない。
『朝、一~二時間早く起きることは、人生を変えるといってもおおげさではないほど、大きな資産を生んでくれる「時間投資」なのです』。
理屈はおおいにわかるのだけど、朝寝が趣味のワタシとしては痛いところだ。
組曲第3番は、管弦楽曲としては第4と『マンフレッド』の間に位置する、チャイコフスキー円熟期のもの。曲は四つに分かれる。
1.エレジー
北国ロシアの、何故かなつかしく感じるメロディーがまず印象的。目隠ししてこれがだれの作品かと言われたら、間違えずにチャイコフスキーと言えるのじゃないかと思う。
2.ワルツ メランコリック
なんだかはっきりしない、むず痒いような焦躁。ワルツだからといって踊りたくなるようでもなく、ジンセイのやるせなさにうつむいて耐えているようでもある。うら淋しいものがある。
3.スケルツォ
木管楽器の鮮烈な速さとリズムが眩しいほど峻烈。チャイコフスキーが作ったスケルツォのなかでも、最も激しいものじゃないだろうか。独特の霊感が漂う。
4.主題と変奏曲
40分に渡る全曲の半分を占める大作。
品がよくて淡々とした歩みは、あのロココのテーマをおもいださせる。
音楽は手を変え品を変えながら、どんどん進んでゆくが、どれもこの作曲家らしい閃きと甘さに満ちているので、楽しくて飽きない。
なんの前触れもなく唐突にヴァイオリンのソロが奏でられたりして、あたかも彼のバレエ音楽を思い出させる。組曲の4番にもこういうシーンがあるな。
終結部はもちろん、これでもかというくらいしつこい。これぞチャイコフスキー。
全体を通して、3楽章がいい。後期の交響曲に匹敵するほどのレベルに達しているのじゃないだろうか。技術的にはたいへん難しそうだけど。
マゼールの指揮は敏捷そのもの。びりぴり角が立っていて華やか。それに応じるウイーンフィルも軽やかな技を繰り出す。収録は77年、マゼールがこのころにこうした曲を録音していたとは知らなかった。
1977年6月、ウイーン、ゾフィエンザールでの録音。
PR