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スラットキンのチャイコフスキー「くるみ割り人形」(全曲)

2009.01.12 - チャイコフスキー
tchai

チャイコフスキー 三大バレエ レナード・スラットキン指揮セントルイス交響楽団


スラットキンの「くるみ割り人形」を、CD発売当初に購入して愛聴していたのだが、当時の会社の友人に貸してそのままになっている。もう縁遠くなってしまったので返してもらう機会はないが、彼女の再婚祝いだと思えばそれでいいかなと思っている。
それにしても普段クラシック音楽を聴かない人に「全曲」を貸すのもどういうものなんだろうと、たまに思い出すのだが、それほど当時は自分にとってお気に入りが、スラットキンの「くるみ割り人形」なのだった。

そのころ、プレヴィンやドラティなど並居る強豪を抑えてスラットキン盤を選んだ理由のひとつは、出谷啓が強く勧めていたからだった。
この人はアメリカのオーケストラを贔屓にしていて、このスラットキンとセントルイスやオーマンディ・フィラデルフィア、ドラティ・デトロイトなんかを、当時としては(今もか?)異例なほど好んでいた反骨のヒトだった。その反骨ぶりが、けっこう浮いていて、「おいおいマジかよ」なんて思わせるところもあって、楽しい評論家だった。
選んだもうひとつの理由が、セントルイス交響楽団に対してのトピックだった。
この楽団がアメリカのベスト・ファイブの2位になったという情報だ。80年代のこと。ショルティのシカゴ交響楽団に続いて2位という快挙に、みんなが驚いたし、少なからぬ疑念をもったものだった。
それもそのはずで、今まであまり聞いたことのなかったオーケストラが、フィラデルフィアやクリーヴランドよりも上位にいたのだから。
でも実際、この頃のスラットキンとセントルイスのコンビは快調で、テラークやRCAからけっこう多くの録音をこなしていて、その評価も(全米2位という価値に見合うほどのものじゃなかったが)悪くなかったと記憶する。
そういうときに買ったのが「くるみ割り人形」だった。
それを十数年ぶりに聴いてみた。やはりいい演奏だと思う。
聴くのにはとっつきやすいけれども、オケの技量が露骨にわかってしまう曲なので、オーケストラにとってはいささかやっかいな曲だと思うけど、セントルイスのオケの性能はよい。
フィラデルフィアよりも上か、と訊かれたら、なかなか首を立てに振るわけにはいかないけれど、世界のトップクラスにいてもおかしくはないのじゃないかと感じる。
ことに、しっとりと潤いを帯びた弦がいい。チャイコフスキーの幻想世界にふさわしい。木管、金管はさほど色気があるわけではないけど、技量は文句のつけようがない。実直な職人芸のわざ。響きそのものは実直なもの。
スラットキンは、ときおりテンポや強弱を揺らせて、細かな変化をつけるが、それがとても上品に仕上がっている。

それにしても、チャイコフスキーはいい。
小学校6年のときに聴いた「くるみ割り人形」が、そのあと長きに渡ってクラシックを聴くきっかけになった曲だが、それは、いま聴いても充分に耐えうるどころか、じゅうぶん新たな感動を与えてくれる。

1985年3月、セントルイスでの録音。
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Comment

無題 - リベラ33

クラシックを聴くようになったきっかけは私もチャイコフスキーです。5年生の夏休みにピアノ協奏曲をFMで聴いてこの大海に漕ぎ出しました。もっともその直後にはブラ壱にハマってブラ壱ばかり買い捲って家人に顰蹙を買いましたが。
2009.01.12 Mon 22:00 [ Edit ]

Re:リベラ33さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

FMで流れていた「くるみ割り人形」を聴いたのがきっかけで、クラシックを聴くようになりました。
最初に買ったLPは、オーマンディ指揮フィラデルフィア管の三大バレエハイライトで、毎日のように聴いていました。
二枚目は確かカラヤン・フィルハーモニアの「田園」「悲愴」「新世界」だったですね。「田園」と「悲愴」が1枚に入ったスゴイLPでした。
リベラ33さんもチャイコフスキーでしたか。
ボクはブラ壱は当時まだ難しかったですねえ。
2009.01.13 12:39

無題 - mozart1889

チャイコフスキーの「くるみ割り人形」、イイですねえ。小学校の給食の時間に流れておりました。クラシック音楽体験の原点です。
デーやん(出谷啓)も好きでした。アメリカのオーケストラを推す人でしたねえ。ポール・パレーなど、僕はデーやんの書いた文で知りましたもん。今はどうしているんでしょう。正直な物言いで、また、レコード屋の店員の経験もある人だったので、僕は好きな人でした。
2009.01.12 Mon 22:17 URL [ Edit ]

Re:mozart1889さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

当時はレコード芸術や週刊FMを読んでいたので、デーやん節をよく読んでいました。
一般的な評論家がドイツものを薦めるなかで、アメリカのオーケストラばかり推すデーやんは面白い人でした。
そうそう、ポール・パレーも、彼のおかげで名前を知りました。
最近はレコ芸にとんとご無沙汰していますが、デーやんの元気に関西弁を読んでみたいものです。
2009.01.13 12:46

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます

出谷さん、懐かしいですね、某京都のオケストラの演奏会、いつも来ておられました。ガラガラでしたので、良く喋っておられたのを思い出します。

ビッグ5、これも懐かしいですね、もうこういう表現はあまり言われないのかもしれませんね。でも、アメリカの音楽家は、オケストラのプレーヤーになるのを目標にしていますので、そういう点では、まだまだそういうランキングはあるのかもしれませんね〜。

チャイコフスキーのバレエ曲、とんでもなく難しいものです。シンフォニーなど比になりません。「胡桃割り人形」はその中でも割と簡単な方ですが、それでも、とんでもなく難しいです。組曲に入っていない曲がとりわけ難しいです。
ストラトキン・セントルイスのこの演奏、安いですね〜。ほしくなりました〜。

ミ(`w´彡)
2009.01.13 Tue 06:12 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

出谷さん、京都に出没しておられましたか。彼にはいろいろ教えられました。好きな評論家のひとりです。

そうでした、ベスト5ではなく、ビッグ5ですね^^
セントルイスが2位だったのは、けっこうショッキングでした。スラットキンはあまり知らない指揮者でしたし。
エリートイレブンなんてのもありました。昨日、指折り数えてみました。レベル高いとしみじみ思いました。
チャイコのバレエ曲は難しいらしいですね。rudolf2006さんがとんでもないと言われるくらいならとんでもないのでしょうね。
ストラトキン・セントルイスの演奏、うれしい安さです。他の曲もこれから聴いてみます。
2009.01.13 12:54
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