オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏で、チャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」を聴く。
この曲は標題音楽という形態をとっているものの、4楽章であるし、それぞれの楽章の形式といい、じゅうぶんに交響曲の名を語れる。けれども、交響曲全集には「マンフレッド」を含めないものがいくつもある。バーンスタイン、カラヤン、メータなど、最近では飯守泰次郎がそうである。4番と5番の間の時期に作曲されているわりには、確かに毛色は異なる。扱いとしては、ベルリオーズの「イタリアのハロルド」のようなものかもしれない。ハロルドはバーンスタインのシンフォニー・エディションではなく、協奏曲・管弦楽エディションに加えられている。
トスカニーニやアーロノヴィッチなどは全集を完成させていないのに単独でマンフレッドを録音している。指揮者の好みというものは面白いものだ。
チャイコフスキーの交響曲は大好物。
好きな順位をあげるとすれば、(1か6)→(2か4)→5→マンフレッド→3、といったところ。
ただ、このオーマンディの演奏は素晴らしい。こういうのを聴くと、5番に匹敵する曲なのではないかと感じないわけにいかない。
1楽章レントは悲壮感が漂う、平たく言えばむっつりとした曲。全曲中ではもっともとっつきづらいように思う。終始に渡って、弦楽器があえいでいるようだ。ずっしりと暗い。
2楽章はヴィヴァーチェ。ロシア民謡のような親しみやすい旋律を、ヴァイオリン、チェロ、フルート、ハープが鮮やかに彩る。最後のほうでハープが左右から鳴らされるあたりは、バレエ音楽を聴いているよう。
3楽章はアンダンテ。穏やかな表情。あたかも夏の終わりのペテルブルクの昼下がりみたいな。かすかにヴィブラートをかけたホルン、微妙にポルタメントをつけたヴァイオリンがことのほかいい。なんという艶やかさ!
4楽章はアレグロ。速くて勇ましいパッセージをヴァイオリンとチェロが見事に弾き捌く。しなやかで力強い。シンバルとタンバリンのキレがいい。いいアクセントになっている。ピッコロの高音は太くて輝かしい。これほどのピッコロを聴いたことがあったっけ? ラスト近くで鳴らされるオルガンは重厚、この曲の大仰さを隠さずにたっぷりと響き渡っており痛快。
1976年10月、フィラデルフィア、スコティッシュ・ライト・カテドラルでの録音。
ひたひたと秋が。
在庫がなく、ご迷惑をおかけします。
5月下旬に重版できる予定です。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR