ウェルナー・ギュラのテノール、ヤン・シュルツのピアノで、シューマン「リーダークライスop.39」を聴く。
夜の世界へいざないます。
ギュラはミュンヘン生まれのテノール。声が澄み切っていて美しい。ディースカウのような抑揚や表情の濃さはないものの、声そのものに深みがあり、まっすぐな歌いぶりがとても心地よい。ノーブルな歌声である。
op.39のリーダークライスはアイヒェンドルフの詩による。ハイネのop.24に比べると、落ち着いていて内省的。恋愛だけを扱ったものではなく、多様なテーマで書かれている。それぞれの詩に連関はないと思われる。シューベルトの「美しい水車小屋の娘」と「冬の旅」との関係みたいなもの、と言ったら穿ちすぎか。
1曲目では異郷をさすらう者の心情が瑞々しい声で歌いあげられ、心をわしづかみにされる。その後も、色調が妙に明るい幻想世界を、ギュラは弾力のある艶やかな声で柔らかに歌いきっている。不思議な音世界である。聴き終わると、儚い夢をみたあとのよう。
シュルツの硬質なピアノもいい。
2001年10月、ハーレムでの録音。
一杯。
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