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シュトゥッツマンのシューベルト「白鳥の歌」

2007.03.21 - シューベルト

毎年この時期に開催される「都民芸術フェスティバル」に今年は行っていなかったなあと思い、二日酔いの体にムチを打って、あわよくば当日券を入手できるのではと淡い期待を秘めて池袋へ駆けつけたが、玉砕。
大友直人と小山実雅恵があの値段で聴けるのならみんな行くわな…。久々に日本のオケを聴くというささやかな夢は、また先延ばしである。


昔ほどFM放送を聴かなくなったが、NHKは時々、大変魅力的なプログラムをこっそり流しているので、油断してはいけない。
私にとってそれは今週月曜日にやられたナタリー・シュトゥッツマンの演奏会であった。この番組は開始時間が19:30と早いので間に合わないことが多く、涙を呑むことも少なくないが、今回はたまたま家にいたのだった。とはいっても当日は録音の準備をして、おもむろに「東京タワー」の最終回なぞを観ていたので、聴いたのは今日になってしまった。

シューベルトの「白鳥の歌」は彼が編んだ歌曲集ではなく、彼の死後に後年の人が編集したものであって、当初は「レルシュタープの詩による歌曲集」と「ハイネの詩による歌曲集『帰郷』」、そしてザイドルの「鳩の便り」という3つに分かれていた。それぞれを独立してプログラムを組む歌手も少なくなく、F・ディースカウの最後の来日公演なんかではハイネのものだけで構成されていた。シュトゥッツマンのリサイタルでもそれを踏襲していて、最後のザイドルはアンコールとして歌うというような、いささか凝った組み立てのプログラムだったようだ。
彼女の歌は、わりと恣意的にシューベルトを解釈したもので、勢い重視という感じ。彼女は女声としては一番低い部類になるコントラルトの声の持ち主だが、低さ=重さというイメージとは離れた、ある種の軽やかさがある。それは随意にテンポを変え、強弱のダイナミクスを大きくとった結果そのように聴こえるのだろう。すごく起伏の激しいシューベルトであって、特にハイネの詩による「都会」、「海辺で」、「影法師」では、後期のシューベルトでときどき顔を出す悪魔的な表情がほのかに見えるようであった。スタジオ録音ではこういうやり方をしなかったであろうと思うと、このリサイタルの価値があるというものだ。

シュトゥッツマン

それにしても、シュトゥッツマンの容貌といい声といい、私はそれに強い母性といったものを感じるのである。なんというか、強い女性に包まれるような安心感を感じるというか。一度でいいからこのヒトに叱られてみたいものである。



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