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F・ディースカウとムーアのシューベルト「美しき水車小屋の娘」

2010.04.04 - シューベルト

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フィッシャー・ディースカウ EMI録音選集


南直哉の「老師と少年」を読む。
悩みを抱えた少年と老師との夜ごとの対話。
少年が問う「生きる意味」について、答えは自分でみつけるしかないとつきはなす老師。
といいつつ、最後に少年に残した言葉は、
「生きる意味より死なない工夫だ」。
なんだか深い。深いし、ちょっぴりユーモラスないい言葉だ。


ディースカウによる「水車小屋」は、70年代以降の録音をいくつか聴いたが、情感よりも構成を重視したと思われる理詰めな演奏。
女にフラレて泣いたり叫んだりするお坊ちゃんというよりは、酸いも甘いも噛み分けることのできる、妙に成熟した若者といった風情。
好みでいえば、牧歌的で青臭い、お坊ちゃんのような歌い回しのほうがいい。
この録音は61年のもので、当時ディースカウは30代半ば。テンポが速めで、理性がかっていることは後年の演奏と同じ方向と感じるが、いくぶんあたりがやや柔らかくて情に厚いのは、演奏者が若かったからか。
ディースカウはときおり音程をはずして歌うことがある。それが技術的な瑕疵なのか意図的なものかわからないが、この曲においても1曲目からはずしているし、そのあとの何曲かについても違和感があるところがある。そういったところもあって、彼の「水車小屋」は今ひとつ買えないなどと思いつつ、終曲の「おやすみ」がおとずれると、端正な情感に痺れてしまうのだ。これが計算なら、一本取られたという感じ。
完成されたムーアのピアノには何も言うことなし。


1961年12月、ベルリン、ゲマインデハウスでの録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんにちは

「生きる意味」難しい問題ですね、「意味」を求めながら生きていくしかないのでしょうか?分かりません。

ディースカウさんのボックス、私も買いました。
それで、コメントが遅くなりました、爆〜。少しは聴いてからコメントしようと思ってしまい〜。

ディースカウさんはものすごく音程は良いかと思います。はずれて聞こえるとすれば、それは意図的ではないかなと思います。ただ、音が高いですから、少しは外しておられるかもしれませんが〜、私はあまり気にならないのですが〜。

でも、やはり上手いものですね、ムーアのピアノ、もう少し主張があっても良いのではと思いました。
ミ(`w´彡)
2010.04.06 Tue 15:58 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

生きる意味、普段は仕事や遊びにかまけてあまり考えないですが、こうした本を読むとふと思い出します。いかになにも考えずにいきているか、身につまされます^^

ディースカウの「水車小屋」は何種類か聴いているのですが、どうも音程が気になるのです。冒頭から怪しいなと。音程が高いからそう聴こえるのかもしれませんね。彼の「冬の旅」ではそういうことを思わないのですけど。
同じボックスでシューマンの伴奏をしているクルストに比べると、ムーアのピアノの冴えを感じます。
世の中激安ボックスが出回っていますが、このボックスもお買い得感がありますねえ。
2010.04.06 23:17
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