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オーマンディのR・コルサコフ「シェエラザード」

2007.09.08 - R・コルサコフ
Ormandy

リムスキー・コルサコフ 「シェエラザード」 オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団 キャロル(Vn)



台風一過で蒸し暑い日がまた続くなあ、などとウダウダ考えていたところ、パヴァロッティ死去の知らせを新聞で知る。
71歳だから驚きはなかったが意外だった。三大テノールの中では、カレーラスが一番病弱っぽかったからだ。
彼を知ったのはテレビでだった。もう30年くらい前。
来日公演の模様だと思うが、白いハンカチを握り締めて歌う姿はとても印象的だった。
そのときに「帰れソレントへ」を歌ったかどうか…、曲目までは覚えておらず曖昧だ。もしかしたら後に観た映像とごっちゃになっているかもしれない。
私の時代には小学校の教科書にも載っていた曲だから、あえてパヴァロッティということもないかもしれないけど、この曲にはこのヒトである。中途半端な知性なぞぶん投げて、腕によりをかけて声に磨きをかけた音楽はわかりやすいし、こんなに爽快な音楽もない。
イタリアには、ミケランジェリやジュリーニたちみたいに哲学的思索の色が濃いヒトたちがいるかと思えば、パヴァロッティのように本能の赴くままな(私のイメージ)演奏家もいる。
さまざまで面白い国だ。


半端な知性をぶん投げたといえば、オーマンディの「シェエラザード」もそうかもしれない。
ここにはロシア臭はおろか、アラビア臭も感じることができない、無味無臭の世界がある。
かといって、無機的だというのではない。この指揮者とオーケストラの特徴として、作曲家の個性を強く匂いたたせる味はないものの、それぞれの奏者の生々しい弾きぶりがリアルに手に取ることができるのだ。
昔、オーマンディがロッテルダム・フィルを振ったブラームスを聴いたことがある。その音源の入ったカセットテープはまだ大事にしまってある。細かいところに拘泥したものではなく、曲を大づかみにした演奏であり、それはフィラデルフィアで演奏している演奏と大きく印象が変わることのないものだった。痩せた録音の物足りなさと、オーケストラの技量の弱さもあったのだが、突出していい演奏というわけでもなかった。
それを聴いて思うのは、オーマンディを聴くときに存在感が大きいのは、いつもフィラデルフィア管弦楽団なのである。全権を握っているのは、指揮者ではなく実はオーケストラなのではないか。
オーマンディは、フィラデルフィアという随一のオーケストラを維持するための管理人であったと思う。

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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんばんは

パヴァロッティさん、残念ですね。ですが、誰しもがいずれ通らなければならない道ですよね。
イタリア人、確かに一様ではありませんね。トスカニーニとジュリーニでは相当の違いを感じますね。でも、ジュリーニは、トスカニーニを尊敬していたと聞きますし~。

オーマンディ師・フィラデルフィアの吉田さんの分析、なるほどな~って読ませてもらいました。
作曲家の書いたものをそれだけで演奏してくれるものとしては、ベストに近いと、私は思っています。で、色々な曲をやる際に参考にする演奏は、フィラデルフィアの演奏なんですよ。スコアが透けて見えるくらい、しっかりとした演奏をしていますよね~。無味無臭なのかもしれませんが、爆~~。

ミ(`w´彡)
2007.09.08 Sat 22:30 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

今朝のニュースバラエティでもパヴァロッティを大きく取り上げています。映像を観ると、こんなに派手でわかりやすいクラシックの演奏家は珍しいです。とても残念。
イタリアでは、トスカニーニはまた違いますね。むっつりでもなく妙に開放的でもなく。とはいえ、彼の演奏を多く聴いているわけではないのですが…。これから聴きたい指揮者のひとりです。

仰る通り、フィラデルフィアは素晴らしい。オーマンディの頃は世界最高だったのじゃないかと思います。

>作曲家の書いたものをそれだけで演奏してくれるものとしては、ベストに近い

穿った解釈をしないところ信頼できます。そして、協奏曲の伴奏、このジャンルではもうダントツにオーマンディが素晴らしいですね。いろいろなソリストがこぞってオーマンディを指名すること、よくわかるような気がします。
2007.09.09 09:54

無題 - bitoku

吉田さん、こんばんは。

パヴァロッティにはお疲れさんと言いたいですね。改めて合掌。
五輪の時の「誰も寝てはならぬ」でも顔面蒼白な感じでちょっとアブナイかなぁ~って気がしました。
イタリアのスーパースターだから体調が優れないのに無理して出たんじゃないかと思いました。

>腕によりをかけて声に磨きをかけた音楽はわかりやすいし、こんなに爽快な音楽もない。

おっしゃる通りです。
この人の「帰れソレントへ」も素晴らしいですね。これぞ”テノール”っていう感じの美声とパワーで何にも考えないで迷わず歌い切っちゃいますから。聴いてて爽快です。
3大テノールも含めてビデオは沢山見ましたが、極上のエンターテイメントですね。単純に楽しめました。

あっ、すみませんパヴァロッティの事ばっかりで。。。

2007.09.08 Sat 22:37 URL [ Edit ]

Re:bitokuさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

最近はパヴァロッティをみていなかったので、病状も体調もしりませんでした。体格的がいいので、いつも元気なのだろうと勝手に思っていました…。
五輪の時の「誰も寝てはならぬ」では、後の荒川の演技と相俟って、印象に残る歌でした。

彼では、あと例の三大テノールのコンサートだとか「仮面舞踏会」、「ボエーム」なんていうところを(少ないのですが)、聴きましたが、ここ30年ではもっとも輝きのあるテノールだったのでしょう。

>これぞ”テノール”っていう感じの美声とパワーで何にも考えないで迷わず歌い切っちゃいますから。聴いてて爽快です。

何も考えないパワー、こういうものは強いですよね。迷いなし。素質と体力で歌いきるアッケラカンさが彼の魅力でありました。
2007.09.09 10:00

感嘆するアレコレ - 老究の散策クラシック限定篇

意外にもこのシェエラザードにはそれほど感銘をうけることはありません。(ショスタコ5番や展覧会の絵も同じく)
然しながら特にフィラデルフィアの木管陣の各パート奏者の鮮やかな吹きっぷり―豊麗な底が見えないポテンシャルを厭というほどどれもこれも感じさせる音盤群です。
コンダクツ20thクラシックス12枚組中でも今更ながら開いた口が塞がらないとはまさにこのこと―圧倒されたアシュケナージとのラフマニノフ3番、スクリャービンの法悦の詩、ラヴェルの各ピース―自家薬籠中の極致と呼んでも差し支えないであろうラプソディーインブルーの有名なあのメロディーライン!
御大の幻想やサン=サーンス3番も是非試聴してみたい衝動に駆られます。
プロコフィエフのバレエ音楽ロメオとジュリエット全曲なんかも絶対このコンビで残してほしかったなぁ。
コンダクツSibelius8枚組も発注後いま到着待ちになっています。

2020.12.19 Sat 07:32 URL [ Edit ]

おはようございます。 - 管理人:芳野達司

その感じ、わかります。上手いことこのうえないけれど、どこか食い足りない。曲との相性なのでしょうか。。「シェエラザード」はバーンスタイン/NYPOのが見事だと思います。
アシュケナージとのラフマニノフ3番は、まったくもって目覚ましい演奏ですよね。ピアノもキラキラと光っている。
幻想とサン=サーンス3番はRCAとテラークの録音は聴きましたが、CBSのを聴いてみたいとかねがね思っています。
プロコフィエフのロメオとジュリエット全曲、よさそうですね~。ヴェルディのレクイエムなんかはどうだろう?もし「トゥーランドット」をやっていたら、面白いものになっていたでしょう。
シベリウスは楽しみですね!
2020.12.19 10:55
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