一曲目は映画音楽「ベルリン陥落」。抜粋といっても30分程度かかる大曲。打楽器と金管が炸裂するところはショスタコならでは、ここらへんはきっとソ連軍が好調なシーンなのだろう。もっともおおむね全編好調。
スターリン賛美に彩られた1949年の映画はソ連初めてのカラー映画、150分の大作だという。これはこれで観てみたいものだが、さて機会はあるのだろうか。
次はチェロ協奏曲2番。有名な曲であるが、とても久しぶりに聴くし、もうおおかた忘れてしまっているので、はてどんな曲だったろうかと記憶を紡ぎながらの鑑賞だったが、案の定、どの場面もまったく覚えていない。だけども、なぜか体に違和感なく溶け込んでくる感じは初聴きではないせいなのだろうか。大太鼓と独奏による第一楽章のカデンツァ、タンバリンと独奏による二楽章のカデンツァ、どちらも打楽器と主役によるもので、緊張感のあおり具合がとても効果的。ソロだけではこうはいかないだろう。
その昔、ベートーヴェンのコンチェルトでクレーメルがティンパニとのカデンツァを披露したが、あれはこの曲に影響を受けたものか。それは穿ちすぎかもしれないけれど、完成度はこちらのほうがよいのではと思う。ずいぶんスタイルが違うから比較はナンセンスだな。
金管はホルンのみ、あと木管と打楽器と弦によるオーケストラとチェロとの組み合わせは独特。とても透明感があるし、見通しがよくてかつ色彩豊か、そして音量的にもバランスがよい加減。3本のファゴットによる速いパッセージは見事に決まってチェロを引き立たせた。
ラストの打楽器によるチャカポコ・アンサンブルとチェロによる終結部、ショスタコーヴィチがよく使ったかたちであり、この演奏はことに沁み入った。終わった後しばらく拍手のない余韻がすばらしく、感動的だった。
チェロは丸山康雄。長身でいかにも温厚そうな男が、細やかな技術で弾き切る切れ味のよいショスタコ。
6番はこの作曲家の多くのシンフォニーのなかでも好きな曲のひとつ。全体の構成はバランスがよいとは言えないかもしれないが、その傾き加減もこの音楽のひとつの魅力。私はこの3楽章が特に好き。おもちゃ箱をひっくり返すといった言い回しがぴったりであって、ショスタコーヴィチのコミカルな味がとてもよく出た作品だと思う。この曲を生で聴いたらどんなだろうかと思っていたが、案の定、そうとうに臨場感あふれた演奏。
全体におおづかみなつくりであるが、その分ダイナミックがまさったもので、ラストは一斉の花火が満開で天空に舞った。2楽章におけるクラリネットの軽妙な演奏も素晴らしかった。
アンコールは2曲、同じ作曲家の映画音楽から「モスクワへの疾走」(だったかな)と「追撃」。シュトラウスのポルカを思わせつつ、重量級のパンチがある小品で締めくくられた。
2010年2月11日、すみだトリフォニーホールにて。
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このオケは、ショスタコーヴィチしか取り上げないとのことです。面白いです。去年は確か10番、今年は6番でした。ショスタコの管弦楽曲は、弦も管も打もまんべんなく活躍するところがよいのかもしれません。
チェロ協奏曲は特にすばらしかったように思います。
ことしの演奏もいいものでありました。