河野真有美さんプロデュースによる、「ガラコンサート」&ヴェルディ「仮面舞踏会」ハイライトに足を運びました(2020年8月1日、加賀町ホールにて)。
牛込柳町の閑静な住宅街のなかに裏千家の邸宅があり、その隣に佇んでいる瀟洒な建物が加賀町ホール。内装の意匠から、個人のお屋敷を改装したのであろうと思わされました。
さて、コンサートの前半はガラ。ベッリーニ、ヴェルディ、プッチーニの珠玉の音楽が並びます。
人口に膾炙した曲に加え、寡聞にも知らないものもあり楽しめました。
「トゥランドット」における、ピンと伸びた鋼線が切れそうな緊張感には痺れたし、「マクベス」の複雑な感情の綾を紡ぐような歌唱に胸を熱くしました。
後半の「仮面舞踏会」は、名曲が咲き乱れるヴェルディ中期の傑作。事前にカラヤン盤で予習しました。
はち切れんばかりに勢いのあるリッカルド、激しくも伸びのある歌唱が素敵すぎたアメーリア。重厚にしてまっすぐなレナート。それぞれ素晴らしかった。
特筆したいのはウルリカ。陰影の深い声で人生を諭すような役柄でありつつ、あたかも母性愛に満ちたかのような歌いまわしに感服。マーラーの3番を歌ったらいいのじゃないか、そんな余計なことを考えながら聴きました。
ピアノは相変わらず盤石。それに加えて今回は、スタインウェイ(D274)の状態がよかった。磨き抜かれた大理石のような威容と、薔薇咲きほこる夢の国。酔いしれるほかありません。
ホールの音響に関して言えば、ピアノの音はよく通る反面、歌はフォルテッシモのときに天井にぶつかりハウリングみたいな音になっていたのが些か残念。
でも、全体を通して、力の入った、手応えじゅうぶんなコンサートだったと思います。
安保克則(テノール)
乾ひろこ(ソプラノ)
高橋宏典(バリトン)
飯島由利江(メゾソプラノ)
河野真有美(ピアノ)
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