モーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第5番」 ズーカーマン、セントポール室内管正月早々、カミさんがどんよりとしていたので熱を計らせてみると39度。風邪にしては高いので、救急病院に連れて行った。診断結果はインフルエンザA型。
「旦那もマスクをしないといけませんぜ」と医師に脅されてつつ、マスクの自販機に案内された。
「他にご家族は?」
「高3がひとりです」
「えっ、受験生ですか。それは大変ですねえ、はっはっはっは」
「いやあ、それほどでも。なはははは」。
そうしてカミさんの隔離政策が始まった。
しめしめとばかりに、居間で時間を気にせずにおおっぴらに音楽を聴いたりDVDを観たり本を読んだりできると胸算用したものの、どうも落ち着かない。3度の食事の用意はともかく、水は足りているか小腹がすいていないか熱がぶりかえしていないか等々、気をまわして、むしろ気が散ってしまうのだった。
そんななか聴いていたのはズーカーマンのモーツァルト。
5番の演奏でよく聴くのは、フランチェスカッティとパールマンのもの。ことに前者は、オーストリア風のワビサビ的な間や陰影が楽しめて好きな演奏のひとつ。
今回初めて聴いたズーカーマンのは、なんというかひたすら元気。疲れを知らない子供のように、最初から最後まで全力で駆け抜けてゆく。ズーカーマンのヴァイオリンも、セントポール室内管のバックも、直線的な推進力があって力強い。ワビサビ的な味わいはワルター達にまかせておけばよい、なんて思ったかは知れないが、これはこれで立派な演奏。ややカロリーの高いモーツァルトではある。
1982年の録音。
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