マーラー 交響曲第5番 レヴァイン指揮フィラデルフィア管弦楽団プロ野球のクライマックス・シリーズが終わった。CSの評判はあまり芳しいものではないが、私はいつも楽しんで観戦している。
どちらのリーグも結果的に差が開いたが、毎試合見どころが多くて面白かった。パ・リーグの見どころのひとつは、シリーズ前に契約を打ち切られた野村監督の言動だった。場外活動ではあったが、毎回期待するくらいの内容はあった。彼は、ファンが何を望んでいるかを熟知している。最後の胴上げを含めて、1試合目の日ハムの歴史的大逆転が少し霞んでしまうくらいの存在感があった。
セ・リーグは、最終戦を除けば毎試合接戦で緊迫感があった。第3戦は井端のファンブルを機にしての逆転劇だったが、あれが勝因だったように思う。もっとも、あれはエラーではなくヒットであるべきだ。打球に大きなドライブがかかっていて、バウンドしたときにイレギュラーに変化していたからである。
この試合では荒木の攻守に渡るビックプレイが最大の見所だった。記憶に残るプレイ。荒木と井端は粘りのある打撃も魅力だが、守備だけでも億の価値はある。
ファイターズとジャイアンツが勝ち残ったのは、戦力的には順当といえるかもしれない。
どちらがくるか。勢いでは互角だけど層の厚さと監督の冴える采配でジャイアンツが一歩有利かな。
レヴァインのマーラー。
70年代の半ばから80年代初頭にかけてRCAに録音している。シカゴ、フィラデルフィア、ロンドンといった異なるオーケストラを曲によって振り分けるやり方はアバドがシカゴとウイーンとで録音した方式とほぼ並行しており、後のバーンスタインの先駆けといえる。
レヴァインは、このシリーズでとうとう2番と8番を録音しなかったのが残念であるが、残された演奏は秀逸。
この5番は、最初にレコードで出たときは10番の1楽章とカプリングされた2枚組だった。当時憧れのレコードだった。まともに聴いたのはCDになってから。5番のみ1枚に収録されたものがこれ。
フィラデルフィアの華麗で広がりのあるサウンドを基調にして、レヴァインがメリハリのついた采配を振るった明快なマーラーである。
この演奏は、大らかななかにもディテイルのこだわりがあって面白い。例えば1楽章で葬送行進曲のテーマをトランペットとティンパニが掛け合うシーン。5'48"のあたり。1回目は短い間隔で叩くティンパニが、2回目では微妙に間隔を広げて叩く。これは楽譜に沿ったやりかたであるらしいが、実際にここまではっきりと叩きわけている演奏は少ない。細かいところだが、起伏の変化を鋭敏に感じることができる場面であるから効果は大きい。
トランペットはケイドラベック、ホルンはジョーンズ。華やかでスケールの大きいところ、方向は一致していて迷いなし。
ラストは金管も弦も遠慮なく鳴りきった怒涛の音響。全曲を通して、カラッと晴れた秋晴れのように明快で涼しげなマーラーである。
1977年1月17-18日の録音。
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