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クーべリックのマーラー「交響曲第1番"巨人"」

2010.05.15 - マーラー

ma

クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団


テリー伊藤の「なぜ日本人は落合博満が嫌いか?」を読む。
2007年の日本シリーズ第5戦。私はラーメン屋でビールを飲みながらこの試合中継をみていた。8回まで完全試合をしていたピッチャー山井が岩瀬に交代したとき、「だから落合はだめなんだよ」と客がのたまったものだ。
この客の感覚が、野球ファンの落合評価の象徴であるように思われる。落合野球はつまらない、とはマスメディアも言っているし私の周囲からもよく聞こえる。
そこへテリーが反論する。「落合博満は日本の宝」ではないかと。
彼の野球に対する見識と愛情が深いことは、名著「ダメ監督列伝」を読んだから知っている。テリーの言うことなら信頼できる。
落合が日本の首相だったら今どうするかとか、「2番じゃだめなんですか?」と蓮舫に突っ込まれたら落合ならどう切り返すだろう、なんていうことを面白おかしく書く一方で、川上哲治や高木守道など1流プロからの目も盛り込んでおり、説得力じゅうぶんだ。
そのなかでも、落合の談話は迫力がある。
「われわれはファン心理になっちゃいけない。ファンは好きなことを言えばいい。力のある者ならば若くても40歳を過ぎていても使う。残念ながら評価される選手と人気のある選手はちがう。俺たちは野球で飯を食っている。テレビ番組で飯を食っているわけじゃない。われわれは派手なことを求めてはいない」。
このくだりを有楽町線の中で読んだとき、背筋がぞっときた。落合野球の骨子があらわれているのじゃないかと思う。


クーベリックがDGに残したマーラーを聴くシリーズを密かに企んでいて、数年がかりでようやくあと2曲のところまできたのに、それが廃盤になってしもうた。たまたま中古屋で見つけでもしないかぎり当分おあずけだ。残念である。
その代わり、というか代わりになるのかよくわからないが、ライブの演奏を入手したので早速聴いてみる。
至極まっとうなテンポでもって、内声部を明確に鳴らせるあたりはなるほどこれはいつものクーベリックである。
この演奏における白眉のひとつは3楽章だ。ティンパニのリズムに乗って、様々な楽器が順番に弾いてゆくわけだが、最初のコントラバスからして、なんとも味わい深い。この演奏を聴いて初めてこれがベートーベン第9のパロディであることに気付いた、なんてね。
でも演奏は本当にいいもので、いままで聴いたCDの中でも上位にいれたい。3楽章から、全体のボルテージはグングン上がってゆく。前半で時折コケていたホルンとトランペットは立ち直っている。終楽章は知情意を兼ね備えたような、バランスよく密度の濃いものだ。ラストは大爆発。周到な計算をしているに決まっているが、それを感じさせない。
クーベリックはスタジオもライブも両方よい。この演奏においてもヴァイオリンの対抗配置が効果的だが、それは対抗配置によるマーラーがよいというよりも、クーベリックのマーラーがよいということだ。

1979年11月2日 ミュンヘン・ヘラクレス・ザールでの録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

落合監督、頭が良いですよね、それと、職業として野球をしているのだということがはっきりとしている人ですよね〜。その辺りが「野球少年」には気に入らない野でしょうね〜、野村さんと同じ匂いのする監督です〜。

クーベリックのマーラー、廃盤ですか;;
とうとうそこまで来ましたか、爆〜
廉価盤が出続け、正規盤はもう数少なくなってきていますからね〜。一枚ずつ聴いていくのはかなり困難な時代かもしれませんね〜。

1番は滅多に聴かないので、クーベリック盤も聴いたかどうか、もう一度聴いてみたいと思います。ライヴ盤にまではまだ手が出せないですね〜。

ミ(`w´彡)
2010.05.16 Sun 07:49 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

テリーの野球本にはハズレがないようです。
みんな落合を嫌っているが、もし中国の代表監督になったらどうするの、ということを言っています。それも見たいような気もしますが。

クーベリックのマーラー、ググってみたら、単品は廃盤であるものの全集は現役でした。最初から全集を買えばよかったんですよね…。しかしこの期に及んでと思うと二の足を踏みます。どうしようかなあ。
2010.05.16 17:56
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