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"生きているのはひまつぶし"、ゼルキン、ベートーヴェン"12番"

2012.09.06 - ベートーヴェン
 
bee
 
ルドルフ・ゼルキン ベートーヴェン選集




深沢七郎の「生きているのはひまつぶし」を読む。

先月にみんなで「にわか」ファンになったこれについて痛烈。

「水泳なんていうのは人間の泳ぐ速さなんて限度が決まっていてね、1秒とか2秒とか1分か2分だよ。いくら速いっていったって、ちゃんとした飛行機や船にはかなわないんだから、ちょっとくらい速くったって、そんなことたいしたことじゃないって、オレは思うんだよね」。
「スポーツの選手なんていうのは、おだてられて、自分の体に無理に無理して、自分の体力以上のことをやっている。ひとつの犠牲者だと思うね」。

「それを言っちゃあ」なんだけど、「そりゃそうだ」でもあるな。
生きる意味を見いだせない以上、スポーツを、ジンセイを、「ひまつぶし」といっても過言ではないだろう。








ゼルキンのベートーヴェンを聴く。
12番というのは、初期なのだろうか、中期なのだろうか。作品番号だと26だから初期のような感じだが、作風はもう中期に浸かっているような気がする。
1楽章の冒頭から毅然としていて、それは全体を通して貫かれている。これしかない、どの楽章も、これしかない、というような迫力に満ちている。
ショパンの2番のソナタはこれを参考にしたという話があるが、あれは本当だと思う。ショパンのものはちょっと軟い感じだが、雰囲気はソックリだ。

私はこの曲の終楽章のアレグロが昔から好きで、ことにグールドの演奏を気に入っていた。階段を下りてくるように音が下降してくるところが3回続くところが、それぞれのピアニストによってちがうんだけれど、グールドの噛んで含めるような弾き方が気にいっている。
このゼルキン盤もそれに近いようだ。グールドよりも硬いけれど、3回とも階段を異なる表情で降りてくる。楽譜の読みが深いのだ。

これはいい演奏。


1970年12月、ニューヨーク、コロンビア30番街スタジオでの録音。









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Comment

第4楽章の弾き方というと - yoshimi

こんにちは。
第12番は4つの楽章の曲想・書法が全然違っていて好きな曲です。
第4楽章は、練習曲風なシンプルな音の配列なわりに、弾き方がいろいろあるので、聴き比べるのが面白いですね。
葬送行進曲の後なので、”死のあとに生命の流れの再出発”を表わしているのに、クラマーの練習曲のように弾く人が多いと、アラウは言ってました。
速いテンポでメカニカルになってしまうんでしょう。

アラウは男性的で力強く弾いていますが、これは”誕生”を表現したからでしょう。ブレンデルは、彼らしくアーティキュレーションがよく練られていて、優美なタッチです。

グールドはノンレガート的なタッチで、左手の表現が面白いですね。彼のフレージングやタッチは独特なので、誰が弾いているのかすぐにわかります。
ゼルキンの弾くベートーヴェンは、男性的というイメージがあるのですが、これはゆったりとした柔らかなタッチで優美な感じがします。
ちなみに、この録音もゼルキンがリリースを許可していなかったものです。
2012.09.06 Thu 08:36 URL [ Edit ]

まさに練習曲風ですね - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんにちは。
第12番は好きなんです。とはいえ、それほど多くの演奏を聴いているわけではないのですけど。
”死のあとに生命の流れの再出発”ですか、なるほど。そういう見方もできそうですね。
確か、昔ポリーニがライヴでこれをやったんですが、あれは流れるような弾き方でした。
グールドはリズミカルで弾力があって面白いものです。
アラウやブレンデルもぜひ聴きたいですね。

この録音もお蔵だったのですか。なぜでしょう?もったいない!
2012.09.06 09:43
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