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"はるかなるもろこしまでも"、ゼルキン、"皇帝"

2015.03.21 - ベートーヴェン





夢枕獏の「はるかなるもろこしまでも」を読む。これは、「陰陽師 醍醐ノ巻」に収録されている短編小説。陰陽師の安倍晴明と笛の名手である源博雅のコンビが、京の都で発生する怪奇な事件を解き明かすというシリーズのひとつ。

最初の秋の虫の鳴き声が描かれている。カンタン、クサヒバリ、鈴虫、カネタタキ、松虫、コオロギ、閻魔コオロギ。全部、ひらがな。ひとつひとつの文字に特段の意味はないように思うが、丁寧に読んでみるとなんだか楽しくなってくる。実際に、秋の虫たちが目の前にいるよう。

内容は、謎の女の正体を暴くミステリー仕立て。あるときは歌合せの会、あるときは相撲の節、あるときは小川の魚獲りで、見知らぬ女が現われる。いつも楽しそうにコロコロ笑っているが、気がつくと女は消えている。伽羅の匂いを残して。やがて街の噂になる。
ラストで女の素性があきらかになるわけだが、ここは涙なくしては読めない。

この巻は、全編中の白眉。文句なく面白い。ページをめくるのが惜しくなるくらい。
平安の都に思いを馳せずにはいられない。








ルドルフ・ゼルキンのピアノ、バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルの演奏で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲5番「皇帝」を聴く。

ゼルキンの「皇帝」は、小澤指揮ボストン交響楽団の演奏で聴いたことがあるはずだが、印象に残っていない。それは、当時彼はかなりの高齢だったということがあり、しかしなおそこそこいい演奏であったけれども、ゼルキンという高いハードルを鑑みると予想以上というわけじゃなかったから、ではないかと思う。

このバーンスタインとのものは初めて聴く。40年もクラシック音楽を聴いてきて、呑気なものだ。

ゼルキンは録音当時、60歳手前。脂の乗り切った時期である。バーンスタインはニューヨーク・フィルの音楽監督として飛ぶ鳥を落とす勢い。大きな期待をしないわけにいかない。

冒頭の、壮麗なオーケストラの響きとパンチのきいた華麗なピアノで、この演奏のレベルの高さは、もう保証されたようなもの。すみからすみまでが聴きどころ。
テンポは全体的にいくぶん速め。推進力が強く、ぐいぐいと前に進む。ピアノはときに剛直、ときにデリカシーに溢れていて、なにしろ表情が豊か。テクニックは目覚ましい。全編に渡って、生きる喜びが爆発している。

バーンスタインの指揮はとても快活。攻めるところは総動員で攻める。1楽章の第2主題のなんと力強いこと。繊細な場面においては針の穴を通すような注意深さで音を紡ぎあげる。2楽章の、弱音器のヴァイオリンはことのほか美しい。

人生、こんなふうに過ごしたいものだ。夢だな。


1962年5月、ニューヨーク、マンハッタン・センターでの録音。




おでんとツイッターやってます!




ma








本を出しました。
お目汚しですが、よかったらお読みになってください。












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Comment

無題 - リベラ33

出版された「クラシック音楽の毒と薬」が今月のぶらあぼに掲載されていましたね。優れた内容で、私のように不勉強な鑑賞家には打ってつけでした。勢いついでにもう一冊購入して実家に送ります。
2015.03.21 Sat 18:37 URL [ Edit ]

リベラ33さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

取り急ぎ、WEB版で見てみました。錚々たる著者たちと同じ土俵にいるのは場違い極まりない感じですが、うれしいです。紙のも入手しなきゃ。
情報ありがとうございます。
2015.03.22 17:15

お早うございます - rudolf2006

芳野さま お早うございます

web版見ましたよ…
Amazonにレビューを書こうと思いながら…

ゼルキン師の「皇帝」が出てきましたね
同じような曲をモノラル時代から何度も何度も録音して来ていますよね
それが許される、良き時代に生きておられたのかもしれませんね、録音嫌いでありながらも…

ゼルキン師の「皇帝」ではモントゥーとのライヴ盤が一番ではないかなと思っています、一ファンとしては…
燃焼度が半端ではないですよ

ミ(`w´彡)
2015.03.26 Thu 07:44 URL [ Edit ]

ゼルキンはいいな - 管理人:芳野達司

rudolf2006さん、おはようございます。

Amazonにレビューですか。。お手柔らかにお願いします(笑)

ゼルキン師の「皇帝」を聴くのは初めてかもしれません。いい意味で予想通りでした。このあと、機会があり、クーベリックとのライヴ演奏の「皇帝」を聴きました。ゼルキンは当時74歳だったということですが、テクニックの衰えなど微塵も感じさせない見事な演奏です。好みでは、こちらのほうを気に入りました。
モントゥーとのライヴ盤、あるのですね。気にしておきます。
2015.03.26 11:51
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