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マゼールのプッチーニ「トゥーランドット」

2007.02.04 - プッチーニ
トゥーランドット

プッチーニ 「トゥーランドット」 マゼール指揮 ウイーン国立歌劇場 マルトン(トゥーランドット)、カレーラス(カラフ)、リッチャレッリ(リュー)、他


昨晩、大根を切っていたらついでに指も切ってしまった。血が止まらないので医者に行ったら、5針縫うハメになった。最初は絆創膏ですまそうと思っていたが、とんでもないことであった。
おかげで包帯ぐるぐる巻きで、しばらくは字もろくに書けない体になってしまうようだ。
不注意であった。トホホである。


気を取り直して、オペラのお話を。
私が今まであまりオペラを聴かなかったのは、物語が荒唐無稽だということも理由じゃないかと思っている。これはよく言われることだけれども、なぜそうなのか。
日曜日恒例(??)のテキトー音楽論を展開してしまおう。
台本の種類は大きく2つに大別されるようだ。ひとつはオリジナルが存在するもの。オリジナルが文学作品のものは、作曲の都合に合わせて脚色しているので、原作とはだいぶ違ったものになっているものがある。もうひとつは、台本がオリジナルであるもの。これはそもそもオペラを念頭に置いて書かれているので、あまり細部に拘泥していない。
で、個人的には、どちらもそのままでは読むに耐えないものだと思う。それが実際に劇場でオペラを観るとすごく良いのはどうしたわけかというと、音楽の比重のほうが圧倒的に勝っているからだろう。劇場でオペラを観るときにも、字幕はあったほうがいいし、ない場合はおおまかなあらすじを抑えていたほうが楽しめるのは間違いない。
馬鹿馬鹿しいお話は音楽によって昇華されるのである。
これはCDを聴くときも同じようである。あらすじを全くしらなくてもある程度は楽しいが、知っていたほうが深さを感じるみたい。
それは、ざる蕎麦とつゆの関係みたいだ。
つゆをそのままでは辛くて飲めないが、蕎麦をつけることによって絶妙なうまさになる。昔の江戸っ子はつゆはほとんどつけずに飲み込んでいたらしいが、それはあらすじを全く知らないで聴くようなものだったのかも知れない。
なんて。大風呂敷を開いた割にはわかりきった結論なのであった。

さて、「トゥーランドット」、このCDは良くも悪くもマゼール色が強い演奏だ。ウイーン国立歌劇場の総音楽監督時代の数少ない録音のひとつだが、ライブ特有の臨場感はひしひしと感じるし、オケもまったりとしてコクのある響きを惜しみなく出しているし、歌手もそれぞれ健闘していて完成度は高いのじゃなかろうか。
マゼールのオケに対する煽りかたは、かなりキワモノ的なものだ。それが下品になる寸前で止められているのは、ウイーン国立歌劇場管(というかウイーン・フィルといってもいいか)のこってりとした響きであろう。イタリアのオペラハウスはもちろんいいけれど、ここでのウイーンの、落ち着きはあるが軽やかさは微塵もない響きには独自の味わいがある。
歌手ではまずマルトン。それほどいい声だとは思わないが、なにしろパワフルだ。第2幕の後半では、オーケストラ+合唱の強奏のさらに上を飛んで天井桟敷につきささるかのような豪声を聴くことができる。CDで聴いても背筋が震えるほどだから、生で聴いたらおしっこをちびるだろう。
そういうヒトが相手ではカレーラスもつらいが、さすがに土俵際で踏みとどまる粘り腰。少々きついか、という場面もあるが、「誰も寝てはならぬ」では3大テノールらしい(?)ドラマチックな歌を披露してくれる。
リッチャレッリのリューはとても安定していて、聴きやすい。

なんて。偉そうに書いてきたが、「トゥーランドット」はこの盤以外聴いたことはないのだった。
ちなみにこのCDでは場面ごとにトラックわけがされておらず、幕ごとにわけられている。非常に大雑把である。対訳ももちろんついていない。交響曲を聴くようなノリで勝負しろと言われているみたい。




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Comment

無題 - Niklaus Vogel

吉田さん、お大事になさってください!
包帯グルグルでこれを書かれたのですね、感慨もひとしおです。
「トゥーランドット」、これを初めて知ったとき、「ピンポンパンはここから取ったのか!」などと音楽とはまったく関係ないことに感心してしまいました(笑)。
このオペラ、あまりにリューが可哀相でなかなか聞けません…(たんに私が単純な物語没入タイプなのかもしれませんが(笑)。)
2007.02.04 Sun 22:00 URL [ Edit ]

Re:Niklaus Vogelさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

>お大事になさってください!
恐縮でございます。包帯で固定されていてペンを持つのは困難ですが、キーボードは難なく打てます。今週も、世間の反対を押し切って(!?)テキトー音楽ばなしを書けそうです。
「ピンポンパン」、私も同様で、ここから取っていたのかと感慨深いものがありました。クラシック音楽の世界は広いようで狭い部分もあるようです。
リューは気の毒です。むしろこの役がおいしいのかもわかりませんが…。
2007.02.04 22:31

無題 - しじみ

こんばんは。おケガ、大丈夫ですか?私もかつて包丁で5ミリほど切ったことがあり(縫わずに済みましたが)、その傷跡がまだ残っています。お大事になさってください。
トゥーランドットはやはりリューの不憫さが際立ちますね。あほカラフ~!!!と私は怒鳴りたくなります(笑)まあでも、哀れで不憫で、でも決然としたヒロインが、プッチーニの特徴ですからねえ。私も、トゥーランドット、取り上げるかもしれません。
2007.02.04 Sun 22:34 URL [ Edit ]

Re:しじみさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

ご心配おかけし申し訳ありません。切ったときは、指先がちぎれそうになって、顔から血の気が失せました。ホントに不注意でした。いやまったく情けない…。
確かに、カラフはアホっぽいキャラですね、そのなんともいえない一途さがオペラの主役たりえているのでしょうか??
しじみさんの「トゥーランドット」、楽しみです、是非取り上げてください。いろいろ教わることは多いです。
2007.02.04 22:44

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます。

怪我、大丈夫ですか?お大事にです。
オペラとリブレットの関係はややこしいですね。
ヴェルディの『ファルスタッフ』などは、ボイートの作品ですが、原作のシェークスピアよりも良いという評価もありますね。ただし、ヴァーグナーなどは、英語で上演されると興ざめみたいですね、歌詞が陳腐で笑いそうになるそうです、小rれは、ドナルド・キーン氏が書いておられましたが。
『トゥーランドット』は、好きなオペラで、ニルソンさんの盤を2組も持っています。マゼールでは、ニルソンさんの歌っている『トスカ』を持っています。これも良いですよ。
ミ(`w´彡)
2007.02.05 Mon 06:06 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

怪我のほうはなんとか回復しているようです。ありがとうございます。
>ヴェルディの『ファルスタッフ』などは、ボイートの作品ですが、原作のシェークスピアよりも良いという評価もありますね。
なるほど、「ファルスタッフ」は比較的聴くほうなのですが、そういう評価があったのは知りませんでした。
>ニルソンさんの盤を2組も持っています。
ニルソンはモリナーリ・プラデッリとラインスドルフですね。最近プッチーニのCDについての本を漁っていますが、モリナーリ・プラデッリ盤は断然良いそうですね。聴いてみたいです。マゼールの「トスカ」も気になります。
2007.02.05 21:33

無題 - ピースうさぎ

吉田さんとんだハプニングですね。お大事にしてください。
トゥーランドットは1度オペラを観に行っただけです。最後は「愛!」で片付けられてしまう芝居ですから、あまり歌詞対訳は必要ないのでは?と思うくらいです。
トリノ五輪以来このオペラは(というかあのアリア)やたら題名が一人歩きしていますね。
2007.02.05 Mon 20:45 URL [ Edit ]

Re:ピースうさぎさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

今週末には抜糸できそうです。ありがとうございます。

「トゥーランドット」を生で聴いたら格別なのでしょうね。筋書きはとてもわかりやすいものですが、音楽の力が凄いです。
「歌詞対訳は必要ないのでは?」というご意見に賛成です。私の場合、廉価の輸入盤を買っているという建前があるのですが…、セリフよりもまず音楽ですね。
「誰も寝てはならぬ」はすばらしいアリアですが、他にも聴きどころ満載で、2時間たっぷり楽しめました。
2007.02.05 21:46
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