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メストのブルックナー「交響曲第7番」

2009.07.04 - ブルックナー


池澤夏樹の「キップをなくして」を読む。
舞台は主人公のイタル君が記念切手を買いに行く途中の東京駅。改札を出ようとしてキップがないことに気付いて、うろうろしていると知らない女の子から声をかけられ、あるところに連れてゆかれる。
そこは駅の中なのに、同じような年代の子どもが勉強したり遊んだりしている。その日からイタル君は「駅の子」として生活することになる。
朝と晩は電車通学をする子どものサポートに東京中の駅を駆け回る。夜は勉強したり遊んだり。
学校にも家族にも連絡しているから大丈夫なのだというけれど、どうしてこんなことをやっているのだろう。
そんな疑問が徐々に明かされてゆく。

本屋の店頭に並んでいたのであまり考えずに読んでみたら、どうも子供向けの本だったようだが面白かった。
ラストは駅の子みんなで北海道へ電車の旅。別れのせつなさをリアルに描いており、呑みながら読んだら泣いたかも知れない。


b


先月に録画したフランツ・ウェルザー・メストとクリーヴランド管弦楽団の演奏会を観る。
地上波でセヴェランス・ホールを見られるとは思っていなかったので、これは貴重な放送といえる。
しかもリンツ生まれのメストの棒によるブルックナーとあっては見逃せない…というものの、実は録画したことを忘れかけていたのをたまたまDVDのメニューをいじっていたら思い出したのだった。
いいブルックナーである。奇を衒わないオーソドックスな演奏なので、安心してブルックナーの音響に身を任せることができる。
金管楽器はときおりかなり強く奏されるところ、セルのベートーヴェンの録音を思わせるがあれほどキツくなく、全体に溶け合っているところは録音がよいからかもしれない。
この曲の頂点は2楽章のシンバルの登場であるわけだが(シンバルを用いない演奏もあるけれど、例のあそこです)、このメストの演奏では張り詰めた緊張感が一気に開放されるようなカタルシスを感じる。一歩一歩堅実に我慢強く弾き抜いてきたかいがアリマシタという感じ。
クリーヴランド管弦楽団はやはりトータルにレベルの高いオケであるが、ことに弦がいい。ヴァイオリン、そしてヴィオラの響きはよく磨かれており、合奏も精度が高い。
セヴェランス・ホールを初めてまじまじと見たが、ボストンほど古めかしくなくシカゴほど現代的ではなく、ほどよく装飾があり適度に機能的な内装だと感じた。

b


2008年9月25日、クリーヴランド、セヴェランス・ホールでの録音。

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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

池澤夏樹さんの本、面白そうですね
駅中の少年でしょうか?
面白い設定ですよね〜。

アメリカのオケストラは、シカゴを除いて、相当に荒れていると聞いています。クリーヴランドはいかがでしたか?
ウェルザー・メスト ドイツ系の希望の星なんだと思います。吉田さんの聴かれた演奏では、なかなかの演奏であったようですね〜。
今は指揮者が人材難の時代ですよね。ヨーロッパでもアメリカでも同じような人がいつも振っていますよね。
良い指揮者に出てきて欲しいものですよね〜。

ミ(`w´彡)
2009.07.05 Sun 07:45 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

池澤の小説はなにか現実感がないところが気に入っています。この本は夏休みに子どもに読ませるために本屋の目立つところにあったようですが、面白く読みました。

クリーヴランドはなにかとセル時代と比べられてしまいますが、録画(録音)を聴く限りでは60年代とさして遜色はないように感じます。
ドホナーニのマーラーは少し前になりますが、技術的には相当なものでした。
トランペットが強く吹くところは、セル時代からの伝統なのかなとも思います。
ウェルザー・メスト、時期のウイーンの監督ですね。まだあまり聴いていないのでよくわからない指揮者ですが、この7番はいいものです。
今朝、NHKで同じく放送された5番も観ましたが、こちらはちょっと固いように感じました。
2009.07.05 17:26

無題 - neoros2019

フランツ=ウェルザー・メストは現在クリーブランドの常任なんでしょうか?
わたし個人として《指揮者のブーニン》という印象が強く女性の追っかけも多いいのが事実だったようです
ベルリンフィルやウィーンフィルを振る格として認知されていないんでしょうかね?
2009.07.06 Mon 00:56 [ Edit ]

Re:neoros2019さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

メストは現在クリーブランドの音楽監督です。最近はメジャーオケの常任や監督でも新譜が出ないのでどういう活動をしているのかいまひとつわからないですね。
《指揮者のブーニン》、なるほど、いわれてみれば顔もなんとなく似ているような。若くしてメジャーデビューを飾ったことも似ているかもしれません。
彼は来年からウイーン歌劇場の音楽監督ということです。まだ聴いたことはありませんが、オペラも得意にしているのでしょう。
2009.07.07 22:30
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