テンシュテット指揮 ロンドン・フィル日垣隆の「知的ストレッチ入門」を読む。
インプットは必ずアウトプットを前提にする。あたりまえのことかもしれないが、これがなかなか難しい。
「本物のアウトプットをする力を向上させるには、周囲の人から何か質問されたら必ず『打ち返す』という習慣を身につけるのが近道」。
「自分の守備範囲にまったく重ならないことについての質問でも、これは知的ストレッチにとってまたとないチャンスです。どんなにくだらないと思える質問であっても『答え』を出しましょう」。
質問を想定するのは想像力。人によって考えは違うから、この仕事はなかなか果てしない。
エロな想像だったら得意なのになあ。
テンシュテットのブルックナー、4番に続けて8番を聴く。これも、LPで聴いた覚えがある。砂川しげひさがこの演奏を絶賛した漫画を見て、「そんなにいいかなあ」とブツブツごちていたものだ。
それから数十年。大学へいったり就職したり結婚してみたり子どもがうまれたり転職したりと、人生の岐路というやつを幾度か経た挙句に、改めて聴くブル8はどうなのか。
これを初めて聴いた頃は、ショルティ的な縦の線にひたすらこだわっていた。切り口はとにかく鋭くなければイカン。なのでセルとかドラティとかシカゴ時代のジュリーニとか、ああいうものが好きだった。でもこうして人間が丸くなった今は、テンシュテットのよさもわかるようになっちゃったのである。
とはいっても、彼の縦の線が甘いわけじゃない。その方面に神経質ではないだけ。では、どこに注力しているかといえば、横の線だと思う。縦が時間であれば横は空間。普段は聞き取りにくいメロディーをなにげなく浮き立たせるセンスが憎い。あくまで、「なにげない」ところが肝要。
サプライズはなくバランスよく自然に流れるから、音楽に深みと厚みが生まれる。堂々とした厚みのあるブルックナーである。
ただ、ひとつだけ文句をいうならば、オーラスの締めのテンポだ。ここはいささか速すぎる。
1982年9月24,26日、ロンドン、アビー・ロード第一スタジオでの録音。
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